2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22591693
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
福田 寛二 近畿大学, 医学部, 教授 (50201744)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西尾 和人 近畿大学, 医学部, 教授 (10208134)
寺村 岳士 近畿大学, 医学部, 講師 (40460901)
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Keywords | 軟骨 / iPS細胞 / 分化誘導 / 再生医療 |
Research Abstract |
再生医療は新たな治療戦略として様々な領域で注目されている.変形性関節症においては軟骨欠損部に対する培養自家軟骨移植が確立されているが、同法は健常部の軟骨採取を必要とするとともに培養軟骨細胞脱分化の問題が解決されていない。人工多能性幹細胞(iPS細胞)は自己の体細胞より作製できるため再生医療の理想的な材料である。これまでにiPS細胞から効率よく軟骨細胞を誘導する方法が充分でないことから、1)ヒトiPS細胞から効率よく軟骨細胞を誘導すること, 2)誘導した軟骨細胞の特性を詳細に検討することを目的に研究を実施した。 具体的な研究課題として、1:未分化多能性幹細胞から効率よく軟骨細胞を誘導する方法の開発に取り組むとともに、2:ヒトiPS細胞およびiPS細胞由来軟骨細胞について機械的ストレスに対する細胞応答を観察する、3:癌化の制御に関して、分化誘導条件とレトロウィルスベクター由来遺伝子の発現制御機構の関係を明らかにする、という3点のテーマに取り組んだ。 1:について、軟骨細胞は発生学的に間葉系幹細胞(MSCs)を由来とすることから、iPS細胞から高純度に軟骨細胞を得るためその前駆細胞であるMSCsを高率に誘導する方法の確立を目指し研究を実施した。本研究計画22年度、23年度にヒトiPS細胞から間葉系幹細胞をin vitro,in vivo両方でMSCsを高率に獲得する方法を確立した。遺伝子発現パターンや分化能力において、コントロールであるヒト骨髄MSCsに類似する性質を有する細胞を誘導することが可能な系を確立しており、iPS細胞実用に向けた方法論として有益であると考えられる。 軟骨細胞の最も特徴的な形質は機械的ストレスに対する細胞応答であることから、テーマ2を設定した。23年度は、まず未分化iPS細胞に機械的ストレスを加え、未分化維持分子機構にどのように影響するかを検討した。その結果、機械的ストレスによりGTPase Rhoが活性化され、Aktのリン酸化レベルの低下を介して未分化性が低下することが明らかとなった。本研究成果により、機械的刺激により未分化細胞の混入とこれに起因する発癌を制御出来る可能性が示唆された。3:については、マウスiPS細胞で予備的検討を行い、in vitroでの分化誘導によって一部のレトロウイルスベクターが再活性化することが確認されたことから、来年度以降の重要な課題とした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1:において効果的な分化誘導方法が確立されたことから、来年度に速やかにストレス負荷実験を実施することが可能である。また、2:において機械的ストレスが未分化維持遺伝子の発現を低下させることが明らかになったため、分化細胞に対する適度な機械的刺激の負荷が最終産物である軟骨細胞の誘導に効果的に機能する可能性は高い。3:が本研究最大の課題であると考えられる。しかしながら、ある培養条件においてウイルスベクターのサイレンシングに関わる機構が影響を受ける事を予備的に既に確認しており、新たな探索を実施する予定はないことから予定通り研究を遂行できると考えている。尚、研究開始以降、2件の特許と2件の原著論文(修正後受理含む)を発表しており、順調な成果をあげている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究細目2:において、適切なストレス負荷条件を決定すること、細目3:において実際にウイルスベクターのサイレンシングに関わる機構をコントロールできるかどうかが最終的な課題となる。2:の課題については既にウシ軟骨組織を用いた予備実験において、負荷の上限を決定しつつある。今後はより詳細な調整を実施する。3:についてはsiRNAなどをもちいてサイレンシング関連タンパク質の変化を決定付けることと、ヒトiPS細胞をもちいた再現を実際に実施する。
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