2011 Fiscal Year Annual Research Report
吸入麻酔薬と静脈麻酔薬による免疫細胞アポトーシス誘導機序の解明及びその相違の解析
Project/Area Number |
22591702
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
黒澤 伸 東北大学, 病院, 准教授 (60272043)
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Keywords | 麻酔科学 |
Research Abstract |
[実験1]揮発性吸入麻酔薬によるアポトーシス誘導時における胸腺細胞のミトコンドリア内膜電位の測定実騨:4~8週齢のBalb/cマウスをエーテル深麻酔下に安楽死させた後、胸腺を摘出、胸腺細胞の浮遊細胞とし、密閉型アクリル樹脂製箱に乾燥しないように静置する。密閉型アクリル樹脂製箱内をイソフルレンまたはセボフルレンがそれぞれ0MAC、1MAC,3MACの定常状態となるように設定した後、アクリル樹脂製箱を密閉した。その状態で培養時間として4時間、8時間、12時間、胸腺細胞を揮発性吸入麻酔薬に曝露したのち、フローサイトメトリー法による胸腺細胞のミトコンドリア内膜電位の容量依存・時間依存的変化を観察した。胸腺細胞のミトコンドリア内膜電位の変化はJC-1色素染色法によって行った。[結果1]イソフルランまたはセボフルランをin vitroにおいて胸腺細胞に暴露すると、容量依存性及び時間依存性にミトコンドリア内膜電位が低下した胸腺細胞が非暴露群に比べ有意に増加した。平成22年度に行った揮発性吸入麻酔薬による胸腺細胞アポトーシス誘導実験の結果と比較すると、興味深いことに胸腺細胞のアポトーシス誘導に先行して胸腺細胞のミトコンドリア内膜電位低下が観察された。[実験2]プロポフォールによるアポトーシス誘導時における胸腺細胞のミトコンドリア内膜電位の測定実験:4~8週齢のBalb/cマウスをエーテル深麻酔下に安楽死させた後、胸腺を摘出、胸腺細胞の浮遊細胞とし、30μMまたは60μMのプロポフォールを添加しCO2インキュベーター内にて4時間、8時間、12時間培養することにより胸腺細胞をプロポフォールに曝露したのちフローサイトメトリー法による胸腺細胞のミトコンドリア内膜電位の容量依存・時間依存的変化を観察した。胸腺細胞のミトコンドリア内膜電位の変化はJC-1色素染色法によって行った。[結果2]プロポフォール30μMまたは60μM存在下に胸腺細胞を培養しても胸腺細胞のミトコンドリア内膜電位はプロポフォール非暴露群に比較して有意な差は認められなかった。この結果は平成22年度に報告したプロポフォールによる胸腺細胞のアポトーシス非誘導性という結果に一致し、免疫細胞アポトーシス誘導における揮発性吸入麻酔薬との差が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
揮発性吸入麻酔薬イソフルレン、セボフルレンによりin vitroにおいて胸腺細胞にアポトーシスが時間依存性かつ容量依存性に誘導されること、さらに胸腺細胞のミトコンドリア内膜電位低下がアポトーシス誘導に先行することからミトコンドリア内膜電位低下が揮発性吸入麻酔薬によるアポトーシス誘導の原因であることが示唆されるという新しい知見が得られ、さらに静脈麻酔薬プロポフォールにアポトーシス誘導作用がないことが判明したため。
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Strategy for Future Research Activity |
一般的な機序として細胞にアポトーシスが誘導されるときは、最終的にアポトーシスを実行する蛋白分解酵素夢カスパーゼ系が活性化するため、イソフルレンまたはセボフルレンによる胸腺細胞アポトーシス誘導にカスパーゼ系酵素の活性化がともなっているかを解析する。これにより揮発性吸入麻酔薬による胸腺細胞のアポトーシス誘導メカニズムの全体像が明らかになると考えている。また、In vitroでの揮発性吸入麻酔薬による胸腺細胞アポトーシス誘導と同様のことがin vivoでもおこるか否かを観察するためにマウスにイソフルレンまたはセボフルレンを1MAC程度吸入させ、その後胸腺を摘出して、胸腺細胞のアポトーシス誘導とミトコンドリア膜電位の変化を解析する。この実験により吸入麻酔法が免疫系にあたえる影響を解析し、本研究をより臨床に近づけた内容としたい。
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Research Products
(6 results)