2011 Fiscal Year Annual Research Report
非シナプス型細胞外腔一酸化窒素・ドパミン系神経伝達から解析した麻酔作用機序の解明
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22591706
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
足立 裕史 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院講師 (80420355)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 重仁 浜松医科大学, 医学部, 教授 (30143176)
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Keywords | 一酸化窒素 / 麻酔薬 / ビキュキュリン / サクロフェン / マイクロダイアリシス法 / プロポフォール / 相乗作用 |
Research Abstract |
ラットの線条体に於いて、in vivoマイクロダイアリシス法による脳内一酸化窒素(NO)代謝産物測定の技術を確立し、極めて安定した状態を維持しながら0.1pmol l^<-1>程度の検出感度でNOの変化を高精度で追及できるようになった。これまでの実験から多大なデータが蓄積され、日常の麻酔の臨床現場で用いられるプロポフォール、セボフルランの細胞外NO濃度に及ぼす影響に関して、測定結果として得られたクロマトグラフの再解析を複数の計算機によって並列的に処理し、これまでのNOの酸化物質の総和のみならず、硝酸塩、亜硝酸塩としてそれぞれの変化を追跡出来るようになった。 従来、全身麻酔の就眠に関する作用機序のキーポイントはGABAA受容体とされてきたが、NOのレギュレーションに関してはGABABも関与している可能性を発見し、これまでに報告されているドパミン、NMDA系を含めた脳内神経伝達系の統合的なフィードバックシステムについて、NOの果たす役割が徐々に明らかとなりつつある。特にドパミン系に関しては、麻酔薬による就眠、覚醒に関して、海外の研究者が新しい知見を発表しており、NOが神経細胞のドパミン輸送体を制御している関係からも、従来の研究成果と合わせて興味深い結果が得られている。 以上の所見は未だ現象論の域を出ないが、本研究に於いて初めて明らかにされた事象であり、麻酔薬の作用機序解明の手掛かりになると考えられる。また、各種の薬剤の脳保護作用、神経毒性作用の解明の他、各種受容体からのシグナルが同じ神経細胞に対して相乗的に作用するメカニズムの探求にも役立つであろう。 成果の一部は常に国際学会で発表しており、既に一部の研究結果は英文論文として発表を開始した。24年度中には最初の成果に引き続いて、実験結果の再解析から得られる新しい知見が国際的学術誌に順次掲載されると予想する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本来の研究の目的である一酸化窒素による神経伝達と麻酔の影響の測定に関して、初期の実験結果の英文論文が掲載確定(印刷中)となった他、麻酔薬の影響を検討する予備実験に関しても、麻酔薬自身の相乗作用に関して新しい知見を得る事が出来、英文論文がほぼ同時に掲載されるに至った。研究者が過去に扱ったドパミンに関する研究結果についても、麻酔作用との新しい知見が国際的に発表される様になり、以前の実験結果も更に学術的重要性が高まりつつあると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の今後の推進方策について大きな変更点は無い。 これまで、臨床的に用いられる代表的な吸入麻酔薬、静脈麻酔薬を対象として取り組んできたが、研究の最終目的は、麻酔薬、投薬とよる差異ではなく、それらを超えて普遍的に発現する麻酔作用に関して、共通的な変化を探求する事にある。 他方、複数の薬剤によってもたらされる相乗的な相互作用に関して、その一元的なアウトカム(例えば就眠、覚醒)に関して、これまでのデータを再度解析しながら、共通の因子を探索し、麻酔作用の発現に普遍的に作用する可能性のある機序を追及する。
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