2010 Fiscal Year Annual Research Report
麻酔による意識消失メカニズムの新たなる展開-視床下部MCH産生細胞の役割-
Project/Area Number |
22591718
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
福田 悟 帝京大学, 医学部, 教授 (30116751)
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Keywords | 麻酔機序 / ラット / メラニン凝集ホルモン / オレキシン / 睡眠・覚醒 / マイクロダイアリシス / 脳波 / 筋電図 |
Research Abstract |
本年度は、最初に安静時およびNK801誘発興奮時の大脳皮質からのオレキシンまたはメラニン凝集ホルモン(MCH)の放出をPush-Pull法を用いて測定可能かどうかを計画した。まずオレキシンを用いて行い、測定はRIAを用いた。その結果、安静時および興奮時の大脳皮質からのオレキシン放出はいずれも測定限界以下の濃度でその変化を追うことができなかった。他の報告によるとこのPush-Pullによるペプチド測定は回収率が最大10%であるとの報告もあり、このことが測定できなかった原因であったかもしれない。このため、MCHに関しては費用の面もあり実験を行わなかった。次に、MCH脳室内投与後の睡眠パターンとマイクロダイアリシスを用いた大脳皮質からのアセチルコリン放出変化を投与後5時間検討した。対照群では生理食塩水を投与した。MCHは投与後1時間(MCH群vs. 生理食塩水群:32.4±8.8vs. 22.7±13.4分,P=0.012,unpairedt test)、2時間(17.7±7.8vs. 8.7±5.1分,P=0.038)、3時間(28.2±11.9vs. 13.8±9.5分,P=0.034)でREM睡眠時間を有意に増大したが4および5時間後では変化なかった。一方、MCH投与後の大脳皮質からのアセチルコリン放出は実験時間中両群間で有意差は見られなかった。以上の結果から、MCHはREM睡眠時間を増大させることがわかった。従来から、覚醒時およびREM睡眠期には大脳皮質からのアセチルコリンが増大することが報告されている。しかし、何故REM睡眠期が増大したにもかかわらず大脳皮質からのアセチルコリンが増大しなかったかはわからない。前脳基底核のアセチルコリン含有細胞は大脳皮質や海馬に投射している。今後は前脳基底核にMCHを微量投与した時の睡眠時間および大脳皮質からのアセチルコリンの放出の変化などを検討する予定である。
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