2011 Fiscal Year Annual Research Report
麻酔による意識消失メカニズムの新たなる展開-視床下部MCH産生細胞の役割-
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22591718
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
福田 悟 帝京大学, 医学部, 教授 (30116751)
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Keywords | メラニン凝集ホルモン / REM睡眠 / 海馬 / アセチルコリン / 脳室内投与 / マイクロダイアリシス / 脳波 / 筋電図 |
Research Abstract |
睡眠は記憶の定着に関連しており、記憶の定着には海馬が関与していることが知られている。そこで、MCH脳室内投与時の睡眠の変化と海馬からのアセチルコリン放出を検討した。脳室内MCH投与は前年度の結果と同じく覚醒時間を有意に短縮し、REMおよびNREM睡眠時間を増大した。また、対照群(生食脳室内投与)に比較しMCH脳室内投与は有意に海馬からのAch放出を増大した。(P<0.01;2元配置分散分析)さらに、脳室内MCH投与後1~5時間における海馬からの総Ach投与量も対照群に比較して有意に大きかった。(P<0.05~0.01;unpaired t test)そこで、REM睡眠時間と海馬からのAch放出の相関をとってみると、有意な相関が見られた。(P<0.01,R=0.3,Spearman rankテスト)一方、NREM時間と海馬からのAch放出とは有意な相関が見られなかった。海馬からのAch放出は記憶にとって重要な役割を果たしていることが報告されており、脳室内投与MCHは記憶の増進と関連があることが示唆された。そこで、脳室内投与MCHが記憶の促進と関連あるかどうかを空間認知機能テスト(Morris Water Maze Test)を用いて検討した結果、脳室内投与MCHは空間認知機能を増進することがわかった。前脳基底核にあるMedial Septum(MS)のコリン作動性神経は海馬へ神経線維を送っている。このことから、MCH脳室内投与時の海馬からのAch放出増大がMCHのMS神経細胞への直接作用かどうかをMCHをMSへ微量注入することにより検討した。その結果、MCHのMSへの微量注入はREM睡眠時間には影響しなかったが海馬からのAch放出は増大した。以上の結果から、脳室内投与MCHの空間認知機能亢進作用にMSが一部関与することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の研究甲請では(1)脳室内MCH投与の海馬からのアセチルコリン放出に及ぼす影響 (2)前脳基底核へのMCH微量投与が、睡眠・覚醒パターンおよび大脳皮質または海馬からのアセチルコリン放出に及ぼす影響を検討することにあったが、これらの課題はすでに遂行できた。さらにWater Maze Testを用いたMCHの空間認知機能にまで検討できたので、当初の研究計画以上に研究をすすめることができたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は麻酔による意識消失にMCHがどのように関与するかを検討することにあった。無麻酔状況において、意識消失には大脳皮質から覚醒伝達物質であるアセチルコリンが減少することが報告されている。脳室内投与MCHは大脳皮質からのアセチルコリン放出には影響しなかったが、海馬からのアセチルコリン放出を増大した。このことから、生理的状態でMCHはどうも意識消失に関与すると言うよりはむしろ記憶と関連があることが示唆され、研究の方向が意識消失から記憶に焦点が変わった。そこで、最終年度としては麻酔状態がMCHの作用にどのように影響するかを検討する必要があると考える。
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Research Products
(1 results)