Research Abstract |
早期グラフト機能不全は肺移植後数日間以内に高頻度で発生し、重篤な呼吸不全を呈する合併症である。本研究の着想に至った経緯は、我々は肺移植後に早期グラフト機能不全が発生した症例を数多く経験し、他の臓器移植に比べて死亡率が高い肺移植の救命率を少しでも高めるためには再灌流傷害を含めた早期グラフト機能不全の原因を解明し有効な治療法を見つけ出さなければならないと強く感じたがらである。早期グラフト機能不全の病態解明と鑑別診断を目的として、術中および術後5日間経時的に炎症性メディエーターと呼吸循環系パラメーターを測定し、炎症性メディエーターの診断的価値および重症度との相関を分析する。 肺移植患者に対し、観血的動脈圧をモニターしながら高用量フェンタニルとベクロミウムを用いた全身麻酔を施行する。麻酔導入後、右内頚静脈より持続心拍量測定が可能な肺動脈カテーテルを挿入し、肺動脈圧、右心房圧、楔入圧、心拍量の測定を開始する。食道に経食道心臓超音波装置を挿入し、心室の運動性、心室径、弁逆流、圧差などを測定する。ドナーに対しては、移植肺の摘出直前にヘパリン300単位/Kgとメチルプレドニゾロン10mg/Kgを静脈内投与しておく。移植肺の再灌流直前よりメチルプレドニゾロン30mg/Kgを静脈内投与しNOの吸入(15ppm)を開始する。 麻酔導入後,再灌流直前,再灌流直後,麻酔終了後,術後6,12,24,36,48,72,96,120時間後の12点において血中インターロイキンIL-1,IL-6,IL-8,IL-10,IL-12,TNF-α,好中球エラスターゼ,血小板活性化因子PAF,CRP,フィブリノーゲンを測定する。同時に,観血的動脈圧,肺動脈圧,動脈血液ガス分析,心拍出量,左右の肺静脈血液ガス分析,経食道的心臓超音波検査,胸部レントゲン撮影を施行し,PGDの重症度を判定する。コントロール群として人工心肺を使用する冠動脈バイパス手術患者5名に対し同様の測定を実施する。NO吸入装置、血液ガス分析装置、心拍出量測定装置、経食道心臓超音波装置などは,現有の設備を使用する。各種インターロイキン、好中球エラスターゼ、血小板活性化因子は測定キットを購入し測定を行う。フィブリノーゲンは院内中央検査部にて測定する。 臨床研究を行うにあたり平成23年度の各研究者の相互関係を下記に示す。 五藤恵次(研究の総括、麻酔および集中治療担当) 大藤剛宏(肺移植手術実施) 溝渕知司(呼吸循環系・炎症性パラメーターの測定)
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