2011 Fiscal Year Annual Research Report
プロポフォールによるアディポネクチン分泌低下の機序とインスリン抵抗性への関与
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22591741
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
上村 裕一 鹿児島大学, 大学院・医歯学総合研究科, 教授 (30211189)
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Keywords | プロポフォール / アディポネクチン / 脂肪細胞 / インスリン抵抗性 |
Research Abstract |
前年度までの研究において、白色脂肪細胞(3T3-L1)およびラットを用いた実験系でプロポフォールが濃度依存性にアディポネクチン分泌を抑制することが判明していた。プロポフォール投与により、脂肪細胞内ERK1/2,JNK,p-38はいずれもリン酸化が促進されていたが、拮抗薬を前投与するとJNK拮抗薬によって、プロポフォールのアディポネクチン分泌抑制効果は拮抗された。またGABA受容体拮抗薬ビククリンの前投与ではこの作用は抑制されなかった。これらのことから、プロポフォールはGABA受容体を介することなく、JNKリン酸化を促進することで脂肪細胞からのアディポネクチン分泌を抑制していることが明らかとなった。次に、プロポフォールのアディポネクチン分泌低下を介したインスリン抵抗性への関与を検討した。アディポネクチンは骨格筋、肝臓、脂肪細胞内のAMPキナーゼを活性化することでインスリンによる糖取り込みを促進することが報告されている。プロポフォール投与による脂肪細胞内AMPキナーゼのリン酸化をウエスタンブロッティング法にて測定した所、プロポフォール50、100μM添加により、AMPキナーゼのリン酸化は抑制された。この作用がアディポネクチン発現抑制によって生じた作用なのかを検討するために、in vivoでラットを用いた実験を施行した。ラットにプロポフォール30mg腹腔内投与し4時間後に肝臓及び骨格筋を採取した。プロポフォール投与量は以前の実験において血中アディポネクチン濃度が低下した量を選択した。肝臓及び骨格筋のAMPキナーゼリン酸化をウエスタンブロッティング法で測定した所、コントロールと比較して有意な変化は示さなかった。このことから、プロポフォールによるAMPキナーゼの活性化抑制効果は、アディポネクチンを介さずプロポフォールによる直接作用である可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画の通り、ウエスタンブロティング法により脂肪細胞内伝達シグナル(ERK,JNK,p-38)のリン酸化も測定し、それがプロポフォールで促進されることを確認し、その作用がGABA受容体拮抗薬ビククリンで抑制されないことから、この機序にはGABA受容体が関与していないことを見いだした。また、プロポフォールのインスリン抵抗性発現機序へのアディポネクチンの関与についても検討することができ、当初の目的をおおむね達成できたと判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度開始したin vivoでのラットを用いたプロポフォールの血中アディポネクチン濃度低下機序に関する研究を継続する。これまでの結果をまとめ、論文作成を進める。
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