2010 Fiscal Year Annual Research Report
血栓の管腔内成長に対する細胞間相互作用とニューロキニン1受容体の役割の検討
Project/Area Number |
22591748
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Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
東 俊晴 埼玉医科大学, 医学部, 講師 (60284197)
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Keywords | ニューロキニン1受容体 / サブスタンスP / 血小板 / 白血球 / 単球・マクロフージ / 深部静脈血栓 / 静脈血栓塞栓症 |
Research Abstract |
われわれは,「痛みに関連する情報伝達物質サブスタンスPがNK1受容体を介して血栓形成を促進するメカニズムを解明する」することを目的として本研究課題を遂行している.平成23年度には以下の成果が得られた。 1. 静脈血管モデルの作成.スライドグラス内に三本の分岐流路を一本の流路に合流させ,静脈血管モデルを作成した。ここにシリコン製チューブを接続し,ヒト血漿を灌流させた。スライドグラスは倒立顕微鏡の観察ステージに置き,CMOSカメラにより,流路に発生した血栓を定期的に撮影記録するための観察システムが作成できた。 2. 分光光度計を利用したXa活性の測定。分光光度計と市販測定キットを利用し,血液凝固第10因子(Xa)活性を測定することが可能となった.ヒト単球系細胞THP-1は培養を継続すると,小型化した細胞が発生し,細胞内スーパーオキシドの蓄積ならびに組織因子の放出が起こり,Xa活性が増加することが確認できた。 3. 完全長NK1受容体を強制発現させたTHP-1の作成.赤色蛍光遺伝子と完全長NK1受容体遺伝子を組み込んだプラスミドを作成した.これをTHP-1に導入し,赤色蛍光ならびに完全長NK1受容体の発現を,蛍光顕微鏡と核酸増幅検査により確認した。 上記の研究成果により,血栓の増大を観測するシステムが完成し,単球系細胞が特定の条件下に血栓増大のきっかけとなる組織因子を放出することが確認できた。この細胞に完全長NK1受容体を強制発現させる技術と,発現した細胞を蛍光により見分ける方法も確立した。これらを通して,完全長NK1受容体が単球からの組織因子放出量を調整し,血栓増大に寄与するかどうかを確認するための実験系が構築できた。完全長NK1受容体発現と血栓形成の関連に注目している研究グループはわれわれのほかになく,本研究を通して,血栓症発症に関する痛み制御の重要性を世界に先駆けて提唱することが出来る。
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