2011 Fiscal Year Annual Research Report
組織内エストロゲン定量による前立腺疾患リスクおよび伸展予測
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22591760
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
柴田 康博 群馬大学, 医学部, 講師 (90344936)
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Keywords | 前立腺 / 組織 / ホルモン / 脂肪 |
Research Abstract |
平成23年度は平成22年度に着手した前立腺周囲脂肪組織でのステロイド代謝の検討をさらに進め、20名の前立腺癌前立腺全摘出術症例より組織を採取して解析を行った。ステロイドホルモン代謝酵素遺伝子発現についてはCYP11A1、AKR1C、5-alpha reductase、steroid sulfatase、CYP19A1はほとんどの症例で発現しており、CYP17A1、HSD3Bについては症例により発現量のバラツキが多かったが発現を確認した。ステロイドホルモン定量ではprogesterone,androstenedione(AD),dehydroepiandrosterone,testosterone(T),dihydrotestosterone(DHT),estrone(E1),estradio1(E2)が存在し、代謝酵素の発現およびステロイド代謝経路に関わるステロイドホルモンの存在は、組織内で活性性ステロイドホルモンに至る代謝が行われていることを示唆する結果であった。ステロイドホルモン代謝を確認するために、同位体ラベルしたprogesteroneと脂肪組織をインキュベートし、代謝産物を定量したところ、17-OH progesterone、AD,Tへの代謝が検出され、脂肪組織内でCYP17によるホルモン代謝が行われることを確認した。この結果は脂肪組織が活性性ステロイドホルモンの前立腺への供給源として働き、前立腺疾患の発生・進展に関与する可能性を示す重要なものである。前立腺組織内でのエストロゲンを含む性ステロイド定量も併行して行い、前立腺組織内でのエストロゲン濃度はE1 22.1pg/g,E2 17.4pg/g,T 42.1pg/g,DHT 3.20ng/g(いずれも中央値)であった。前立腺組織の病理所見、組織内でのCYP19の発現との関連については次年度に解析する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本来の研究目的であった生検組織での組織内エストロゲン定量については、十分な定量精度を得られず進展は遅れているが、早期に解析対象組織を前立腺のみならず、周囲の脂肪組織に広げたことにより、これまで検討されていなかった前立腺周囲脂肪組織での性ステロイドホルモン代謝が明らかとなり、前立腺生検組織でのエストロゲン解析の遅れを差し引いても、当初の計画を超えて進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
前立腺周囲脂肪組織でのステロイドホルモン代謝については、独創性の高い検討であるので、さらに解析を進め早期の論文化を目指す。前立腺生検組織でのエストロゲン解析については、定量精度を上げる検討を継続し、併行して前立腺全摘出術で得られる組織を用いた解析を進め、定量精度が得られたときの基礎となるデータが得られるようにする。
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