2010 Fiscal Year Annual Research Report
前立腺癌におけるアンドロゲン受容体の分子調節機構の解明と治療標的分子の同定
Project/Area Number |
22591769
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
横溝 晃 九州大学, 大学病院, 講師 (60346781)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
黒岩 顕太郎 九州大学, 大学病院, 助教 (90403964)
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Keywords | 前立腺癌 / アンドログン受容体 / 酸化ストレス / 去勢治療 |
Research Abstract |
前立腺癌におけるアンドロゲン受容体(Androgen receptor : AR)の機能解析は、ホルモン治療(Androgen deprivation therapy : ADT)に抵抗性となる、いわゆる去勢抵抗性前立腺癌(castration resistant prostate cancer : CRPC)の病態を明らかにする上で最も重要な研究課題である。 (1)酸化ストレスにおけるARの発現誘導の分子機序 前立腺癌細胞株において、ADTにより、細胞内酸化ストレスが増加し、さらにこの酸化ストレス下でTwist1/YB-1経路が誘導され、ARの発現が促進されること、CRPC株で酸化ストレスが増大していることから、ADTによって生じる酸化ストレスがCRPCの機序の一つであることを明らかにした。 (2)ARの共役因子とCRPCとの関連について Peroxisome Proliferator Activated Receptor γ (PPARγ) Coactivator-1αとHuman heterochromatin protein 1 isoform HP1{beta}が、ARの共役分子であり、これらの活性化が前立腺癌のAR依存性の増殖シグナルとなることを報告した。さらにこれらの分子を抑制するとCRPC細胞株でも細胞増殖が抑制されることから、CRPCに対する新しい標的分子候補となることが判明した。 (3)アセチル化酵素とARの関連について アセチル化酵素であるTip60が、ARの転写共役因子であり、ARの細胞内局在に関与していることを見出した。また、韓国との共同研究により、ヒストンアセチル化阻害酵素であるProcyanidin B3がARにおけるp300依存性のアセチル化を阻害することで、前立腺癌の増殖阻害作用を増強する事を明らかにした。 (4)statinによるAR発現抑制の分子機序 抗コレステロール剤として広く服用されているスタチンが、ARの蛋白分解を促進することで、AR発現を抑制していること、その結果、前立腺癌の細胞増殖抑制とPSA減少効果が生じていること見いだした。これまでに複数の疫学研究からスタチンによる前立腺癌の予防効果が報告されているが、我々の研究はその分子機序の一つを明らかにしたものである。
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