2011 Fiscal Year Annual Research Report
悪性腺腫およびその類縁疾患の診断と治療に関する包括的研究
Project/Area Number |
22591851
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
宮本 強 信州大学, 医学部附属病院, 講師 (70418721)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高津 亜希子 信州大学, 医学部附属病院, 助教 (90447730)
塩沢 丹里 信州大学, 医学部, 教授 (20235493)
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Keywords | 悪性腺腫 / 分葉状頸管腺過形成 / 術前診断 / MRI / 細胞診 / クローン性 |
Research Abstract |
従来、子宮頸部悪性腺腫(MDA)と良性疾患である分葉状頸管腺過形成(LEGH)は、よく似た病態を示すために術前の鑑別は困難とされてきた。我々はMDAおよび術前診断でMDAと混同されやすい類縁疾患の合計112例を集積して中央病理診断および、画像や細胞診・組織診結果を検討した結果、MRIの特徴的所見や細胞診、円錐切除術による生検により、90%以上の確率でMDAや腺癌とLEGHなどの良性疾患を鑑別可能なことを示した。 平成23年度では、さらに、この結果に基づき、18例に術前診断を行い、MDAとLEGH1例ずつに子宮摘出術、LEGH1例に円錐切除術を施行したところ、いずれも術前診断と同一の診断であった。またLEGHと診断し、患者の同意を得て、手術せずに経過観察した15症例についても、進行する例は認めていない。このことから、現時点でMRIや細胞診・組織診による術前診断の正確性は高いと判断しており、さらなる臨床的検討が必要である。 上記症例検討から、腺癌やMDA症例の約半数がLEGHを伴っており、LEGHが癌の前駆病変となる可能性が考えられた。そこで、MDA部分および隣接するLEGH部分のDNAをレーザーマイクロダイセクション法で採取し、アンドロゲン受容体遺伝子の不活化パターンからクローン性を解析したところ、解析可能な4例中3例で、LEGHはMDA部分と同様の不活化パターンの単クローン性を示し、その内1例のMDA部分のみにSTK11遺伝子の変異を認めた。一方、MDAなどの悪性腫瘍を伴わないLEGHの4/9例は多クローン性を示した。 これらのことから、LEGHの一部は単クローン性で腫瘍としての性格を持ち、MDAの前駆病変となる可能性が考えられ、その悪性化にSTK遺伝子変異が関与することが考えられた。一方、LEGHには、多クローン性で腫瘍としての性格をもたないものも多く存在すると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
MDAやLEGHの手術症例自体がまれなため、サンプル数集積は不良であるが、これらのクローン性解析やSTK11遺伝子変異解析が進められ、LEGHとMDAの関連やLEGHからMDAの発癌過程等を明らかにできつつあり、おおむね当初計画の通りに進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的に当初の研究計画の通りに遂行する。形態的には同一のLEGHにも、単クローン性の腫瘍的性格をもつものと、多クローン性の非腫瘍的性格のものが存在しており、両者を簡便に鑑別できる方法についても、検討を開始する。 研究遂行上、現時点で大きな問題は特にない。
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Research Products
(6 results)