2011 Fiscal Year Annual Research Report
先天性難聴モデル動物における聴覚中枢の発達と可塑性について
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22591877
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
伊藤 真人 金沢大学, 医学系, 准教授 (50283106)
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Keywords | 先天聾モデル / 聴覚中枢 / 発達 / アミノグリコシド / 脳の可塑性 |
Research Abstract |
ラットの聴こえの開始(Hearing onset)は、生後12日(P12)頃であるので、それ以前の仔ラットに内耳毒性をもつ薬剤の、アミノグリコシド系抗菌薬(アミカシン)を連日全身投与し、内耳障害を生じさせることで先天聾モダルを作成した。過去の先天聾動物モデルは機械的な蝸牛破壊モデルなどが多く、ヒトの先天性内耳性難聴の病態とは異なる重度障害モデルであった。つまり、人工内耳の適応となるようなラセン神経節細胞が生存しているような非破壊的内耳性難聴のモデルではなかったのに対して、我々の薬剤性内耳破壊モデルはヒトの先天聾により近いモデルといえる。 この薬剤性先天聾モデルを用いて、脳幹部聴覚中枢から聴覚中脳である下丘への神経投射を検討したところ、P12蝸牛破壊モデルと同様に、交叉性/非交叉性投射路の比率が、正常発達ラットとは異なっている可能性が示唆されたので、さらに定量的な実験を進めたところ、外側網帯核から下丘への投射に比べて、蝸牛神経核から下丘への投射が、先天聾の影響をより強く受けることが明らかとなった(これらの結果は、TRIOLOGICAL SOCIETY 114th ANNUAL MEETING (COSM), 2011、28^<th> Politzer Society Meeting,2011にて発表した) 近年、先天聾小児の人工内耳手術が増加し、手術時期も低年齢化が進んでいる。しかし、先天聾における聴覚中枢の発生が正常と比べてどのように変化するかは解明されていない。聴覚中枢の正常発生と、先天聾によっておこる聴覚中枢の変化について知ることは、先天聾小児の人工内耳手術後に、より良い「聴く力」を獲得する上で重要であり、人工内耳医療の今後の可能性を探ることにつながるも)のである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
すでに予定としていた研究目的の70%程度は実験が終了しており、一部の結果については各種関連学会において発表を行うと共に、英文論文として受理されている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、先天聾モデル動物の聴覚中枢の周波数特異性分布(トノトピシティー)の変化を生理学的、解剖学的に検討する予定である。
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Research Products
(9 results)