2011 Fiscal Year Annual Research Report
EMT(上皮間葉転換)を誘導する分子機構を標的とした頭頸部癌転移治療の研究
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22591917
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
今西 順久 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (80255538)
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Keywords | 頭頸部扁平上皮癌 / Cox2 / E-cadherin / 転写抑制因子 / 頸部リンパ節転移 / 多変量解析 / EMT(上皮間葉転換) / 細胞遊走運動 |
Research Abstract |
1.頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)細胞における選択的Cox2阻害が転写抑制因子SIP1,snail,twistの発現抑制を介してE-cad発現増強を導いていたことから,選択的Cox2阻害によるHNSCC細胞の遊走運動能をin vitro migration assayで検討した結果,E-cad低発現細胞では発現増強と共に運動能抑制を示したのに対し,E-cad高発現細胞ではその抑制は微弱であったことから,選択的Cox2阻害は実際に癌細胞のEMTを抑制することで抗腫瘍効果を導く可能性が示唆された。 2.全stageの舌扁平上皮癌の凍結組織標本40例におけるE-cad,その転写抑制因子,Cox2の発現をreal-time PCRにより定量した結果,癌部では非癌部に比べCox2発現が有意に亢進し,E-cad発現は有意に低下していた。臨床病理学的因子との関係ではCox2は頸部リンパ節(LN)転移と,SIP1-twistは分化度・神経周囲浸潤と,snailは分化度と,E-cadはT分類・頸部LN転移との間に,各々有意な相関が認められ,多変量解析の結果頸部LN転移の独立規定因子はE-cad発現低下であった。Cox2とE-cad転写抑制因子の発現亢進およびE-cad発現低下はいずれも舌扁平上皮癌の悪性度と進行への関与が,特に頸部LN転移には癌細胞のEMTの関与が強く示唆された。 3.EMT誘導因子であるSIP1低発現HNSCC細胞SASおよびHSC-4にSIP1のstable transfectionを試みたが,SIP1安定強発現株の樹立が困難であることから,transient transfectionに変更するとともに,SIP1高発現株であるHep2,中等度発現株であるHSC-3に対するSIP1-siRNAによるknockdownを行い,E-cadの発現変化および細胞遊走運動能の変化を検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2011年3月に当教室の実験室を含めた医局施設の移転(引越)が行われたため,その前後2ヶ月以上に亘って細胞実験のすべてを中断せざるを得なかった。またHNSCC細胞への遺伝子導入において効率が不十分且つ導入細胞のselectionに難渋しているため,着目分子強発現細胞モデルの確立が遅延している。加えて臨床組織標本の検討において臨床統計に必要な経過観察期間の延長を要し,また病理学的事項の再評価にも予測以上の期間を必要とした。
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Strategy for Future Research Activity |
HNSCC細胞へのSIP1導入による安定強発現株の樹立が困難であることから,in vivo modelに必ずしも拘らず,transient transfectionおよびsiRNAによるgene knockdownにおけるin vitroレベルでの表現型の変化に絞って評価検討する。また本研究計画作成後に得られた知見である,選択的Cox2阻害がHNSCC細胞の種類によってはE-cadherin発現を増強させる(すなわちEMTを抑制している可能性がある)ことに着目し,そのシグナル経路の特定と,細胞遊走運動能の抑制効果を含めた抗腫瘍効果の評価検討を進めることで,EMTを誘導する新しい分子機構の解明につなげる。さらに臨床組織標本においてもEMT関連因子に加えて,Cox2とその関連因子(誘導因子およびeffector分子)の発現の評価を追加し,悪性度および予後の指標としての臨床的意義を検討する。
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Research Products
(5 results)