2011 Fiscal Year Annual Research Report
疾患特異的マイクロRNAを治療標的とした頭頸部癌の新規治療戦略
Project/Area Number |
22591918
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
齋藤 康一郎 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (40296679)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
座間 猛 慶應義塾大学, 医学部, 特任講師 (30296719)
|
Keywords | 遺伝子 / 核酸 / 癌 / マイクロRNA / トランスレーショナルリサーチ / 頭頸部腫瘍 / 診断 / 治療 |
Research Abstract |
本研究は、頭頸部癌における独自のマイクロRNA(miRNA)発現プロファイルをもとに、治療標的として有用な疾患特異的miRNAsを、臨床情報が管理された豊富な臨床検体を用いて解析・選定し、頭頸部癌の新規治療システムを構築することを目的としている。 3年計画の2年目である本年度は、これまで我々が喉頭癌に特徴的な発現傾向を認めることを見出したmiRNAsのうち、発現の上昇傾向を示したmiR-196aに関してはその阻害遺伝子を、低下傾向を示したmiR-133b、miR-375に関してはその模倣遺伝子を頭頸部扁平癌細胞に導入し、その治療効果を検討した。喉頭癌由来のJHU-011細胞(Johns Hopkins医科大学のJoseph A.Califano医師より供与)を用い、まず遺伝子導入による細胞増殖抑制効果を検討した。いずれの系でも細胞増殖の抑制を認めたが、とくにmiR-196aを用いた場合、有意な細胞増殖抑制効果を認めた。さらに、cell viabilityを定量的に測定するアッセイとしてmultitox-fluor multiplex cytotoxicity assay(Promega)を行ったところ、生細胞数の有意な減少と、死細胞数の有意な増加を認めた。これらの結果はいずれも、頭頸部癌に特徴的な発現傾向を認めるmiRNAsが治療標的となり得ることを示唆するものであった。さらに、喉頭組織検体を次世代シーケンス技術(SOLiDtmシステム:Applied Biosystems)を用いた解析の結果、複数の新規miRNAsを見出した。これらは今後、頭頸部癌における新たな診断・治療標的となる可能性がある。 また、国家公務員共済組合連合会立川病院が新規参加したことで共同研究組織が計6施設4診療科となり、本研究の汎用性・普遍性が増し、より質の高い研究となることが期待できる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の立案当初は、喉頭癌に特徴的なmiRNAsを治療標的として応用することを目的とした。研究を進める中で、1年目にはゲノム上での近傍のメチル化が、miRNAsのエピジェネティックな発現制御機構の一端を担うことを示唆する結果を得た。さらに2年目には、次世代シーケンス技術を用い、疾患の発症・進展に関与し得ると考えられる、新規miRNAsを複数見出すことができた。これらの結果から、我々は申請時の想定以上に、今後頭頸部癌を含めた多くの疾患の診断・治療において極めて有用となり得る成果を生み出していると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
2年目の検討により、in vitroでは抗腫瘍効果が認められたmiRNAsにつき、そのin vivoでの効果を検証する。まず、マウス頸部に、喉頭癌由来のJHU-011細胞を注射して同所異種移植モデルを作成する。続けて、対象となる治療遺伝子を、腫瘍とその周囲に局注し、経時的に腫瘍経を測定する。一定サイズになるまで観察した上で腫瘍を摘出し、組織像を検討する。また、頸部の領域リンパ節も摘出し、転移抑制効果についても検討を加える。さらに、これまでの経過中、腫瘍の発症・進展に関与する可能性が示唆されたゲノム上でのメチル化の程度、あるいは我々が見出した、腫瘍関連遺伝子である可能性もある新規miRNAsの発現状況に関しても、これらのバイオマーカーとしての意義を、共同研究先の頭頸部以外の組織・疾患を対象に含めて引き続き検討し、本研究の幅を広げたい。
|
Research Products
(5 results)