2010 Fiscal Year Annual Research Report
糖尿病モデルマウスにおける抗酸化物質ルテインによる網膜神経保護効果の解析
Project/Area Number |
22591950
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
佐々木 真理子 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (60276342)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小沢 洋子 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (90265885)
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Keywords | 糖尿病 / 酸化ストレス / ルテイン / 神経保護 / 網膜 |
Research Abstract |
糖尿病網膜症は進行性の神経変性疾患と考えられているが、その病理的機序は明らかにされていない。本研究の目的は、抗酸化剤であるルテインを用いて、糖尿病網膜における酸化ストレスの網膜機能障害および神経変性への影響を明らかにし、視機能予後の改善に貢献することである。 ストレプトゾトシンによって糖尿病を誘導したC57BL/6マウスに、ルテイン含有の餌もしくは非含有の餌を与えた。糖尿病導入後の網膜内活性酸素種(ROS)をジヒドロエチジウム(DHE)を用いて測定し、網膜内酸化ストレスが増強していることを確認した。さらに網膜機能評価に網膜電図(ERG)を用い、内層の機能を反映するOscillatory Potentials (OPs)の振幅が減弱していることを確認した。これらの変化はルテインの継続的な摂取により回避された。病理組織学的検討において、糖尿病網膜では、内網状層・内顆粒層の菲薄化、および神経節細胞数の減少が認められた。活性化カスペース3、TUNEL染色陽性細胞数は増加していた。アポトーシスに起因する、これらの変化もルテインの摂取により回避された。これらの変化の分子メカニズムを明らかにするため、網膜内ERK(extracellular-signal regulated kinase)のリン酸化およびシナプトフィシン、BDNF(brain derived neurotrophic factor)を解析し、ERKの活性亢進、シナプトフィシンおよびBDNFの発現低下を確認した。これらすべての変化はルテインの摂取により抑制された。 これにより、糖尿病網膜で惹起される酸化ストレスが神経変性作用を有することが明らかとなり、ルテインが糖尿病による視機能低下を抑制し、神経保護効果をもたらす可能性が示唆された。今後さらに、培養神経細胞を用いて、ルテインが直接的に神経保護作用を有するかを検討する。
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