2011 Fiscal Year Annual Research Report
糖尿病モデルマウスにおける抗酸化物質ルテインによる網膜神経保護効果の解析
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22591950
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
佐々木 真理子 慶應義塾大学, 医学部, 特任助教(非常勤) (60276342)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小沢 洋子 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (90265885)
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Keywords | 糖尿病 / 酸化ストレス / ルテイン / 網膜神経変性 |
Research Abstract |
糖尿病網膜症は、増殖糖尿病網膜症に代表される失明に至る疾患であるが、他方進行性の神経変性疾患とも考えられている。しかし、その病理的機序は明らかでない。網膜は中枢神経系の一部であり、一度傷害されると通常は再生しない。そこで、網膜病変の進行を、特に初期から予防することは、多くの症例の視機能予後を守ることに貢献し重要である。 糖尿病では全身性に酸化ストレスが蓄積し、これが病態に関与するとされる(Danfona et al Lancet1996)。本研究では、糖尿病による神経網膜障害や視機能障害に対し、酸化ストレスがいかに関与するかを、抗酸化物質ルテインを用いて解析してきた。その結果、昨年度までに糖尿病誘導後、網膜内酸化ストレスが増強し、網膜内層の視機能低下をきたすが、ルテインの摂取が抑制することを明らかにした。 本年度の目的は、視機能低下のメカニズムを明らかにすることであったが、網膜内タンパクの解析により、糖尿病誘導後にみられる、ERK(Extracellular Signa1-regulated Kinase)の活性亢進、それに起因するシナプス前物質であるシナプトフィシンの発現低下が、ルテインの摂取により抑制されることを確認できた。これより、酸化ストレスを基点とする視機能低下のメカニズムの一端を明らかにすることができた。また、細胞死、網膜内層の菲薄化、神経節細胞数の減少などの神経細胞死に起因する病理組織学的変化も、ルテインの摂取により回避されることを確認した。今後、病理変化に関する機序の解析を培養細胞での実験を含め、検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度、糖尿病による視機能低下をルテインが抑制することを明らかにしたが、本年度はそれに至る分子生物学的機序を明らかにすることを目標とした。網膜内タンパクを定量することにより、酸化ストレスを起点とする視機能低下のメカニズムの一端を明らかにすることができ、おおむね目標は達成された。また、病理組織的解析も行い、細胞死とそれに起因すると考えられる組織学的変化を確認できた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで、研究計画をほぼ予定通り進めることができた。本年度は網膜細胞の器官培養及び神経系細胞株(PC12細胞)、網膜神経節細胞株(RGC5細胞)を使用し、ルテインが直接的に神経細胞の保護効果を示すか確認する。また、糖尿病による病理組織変化・細胞死のメカニズムをマウス網膜、培養細胞を用いて解析する。具体的には、カスペース、BaxなどのBc1-2関連分子などを指標にイムノブロット法、RT-PCR、免疫染色などを用いる予定である。
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Research Products
(2 results)