2010 Fiscal Year Annual Research Report
ES・iPS細胞を用いた網膜神経前駆細胞の分化機構の解析
Project/Area Number |
22591969
|
Research Institution | St. Marianna University School of Medicine |
Principal Investigator |
鈴木 登 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 教授 (40235982)
|
Keywords | ES細胞 / iPS細胞 / 網膜細胞 / 視細胞 |
Research Abstract |
ヒト網膜細胞の分化機構の詳細は不分明である。網膜神経前駆細胞から網膜神経節細胞を経て双極細胞や視細胞に分化すると考えられているが詳細は確認を要する。我々はiPS細胞から網膜神経前駆細胞を精製する培養法を確立しクローン化にも成功した。この網膜神経前駆細胞はnestin, musashi1, six3, chx10を同時に発現している。この細胞株はフィブロネクチン存在下に神経分化誘導培地とともに培養すると網膜神経節細胞、双極細胞および視細胞に自然に分化する。 そこで視細胞への分化を加速させる基礎的検討として、この細胞を種々のサイトカイン、成長因子、ケモカインとともに培養して視細胞への分化誘導能を評価した。その結果、特定のふたつのサイトカインがCD73陽性の視細胞前駆細胞へ分化誘導できることが明らかになった。特定の培養条件下では95%程度の細胞がCD73陽性視細胞前駆細胞へと分化する。このような高純度の視細胞集団についてはこれまで全く報告は無い。 網膜発生や再生をrecapitulateするこの細胞の特性をさらに明らかにするためと同時に高純度視細胞集団を将来網膜組織の再生に利用するためには網膜神経細胞シートの作成が必要と考え、神経細胞シートの作成を試みた。その結果、予備的ながら2~4層の細胞からなる視細胞シートの作成が可能になった。細胞シートが作成出来た要素の一つは、この細胞が軸策を長く伸ばす性質を持つためと思われる。通常の上皮細胞シートのような胞体同士の接着は全く認められず、軸索同士が接着してあたかも平に伸ばした綿のような形態を示した。この過程は網膜発生のなかでも視細胞層の発生過程をin vitroでrecapitulateしたものと思われ、今後ここに関わる転写因子を同定する。
|