2010 Fiscal Year Annual Research Report
ラットを用いた肺高血圧に対する新しい薬物治療アプローチ
Project/Area Number |
22591987
|
Research Institution | Osaka Medical College |
Principal Investigator |
根本 慎太郎 大阪医科大学, 医学部, 准教授 (20237811)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
寺崎 文生 大阪医科大学, 医学部, 准教授 (20236988)
高井 真司 大阪医科大学, 医学部, 准教授 (80288703)
森 保彦 大阪医科大学, 医学部, 助教 (20287345)
|
Keywords | 肺高血圧症 / アルドステロン / ミネラルコクチコイド受容体 / エプレレノン / 心臓手術 |
Research Abstract |
心血管疾患に対する外科治療は外科技術と術前後管理の長足な進歩によりその成績が向上した。それに伴い、弁膜症や先天性心疾患に惹起される肺高血圧を合併する症例を手術対象とする機会が増えた。しかし、重症な肺高血圧は術後も残存する場合が多く、患者の生活の質や予後を悪くしている。現在、肺動脈性肺高血圧症に対する薬物治療では選択性の高い血管拡張療法が近年登場し一定の効果が認められているが、更なる治療成績の向上のために病態の本質である肺動脈リモデリングを抑制し、肺高血圧の発症および進展を予防する治療薬の開発が期待される。われわれは体血管の硬化性病変(いわゆる動脈硬化)において直接血管に炎症を惹起し、内皮障害、血管平滑筋肥厚、細胞外マトリックス増生を引き起こすアルドステロンに着目し、その抑制が肺高血圧症の治療に応用できるかに着目した。そこで、本補助金による本年度の研究では、モノクロタリン誘発肺高血圧ラットモデルを用い、選択的ミネラルコルチコイド(アルドステロン)受容体拮抗薬(エプレレノン)の肺高血圧病変に対する効果を血行動態的、組織学的、分子生物学的に検討した。その結果、エプレレノンの投与により体血圧低下を伴わない有意な肺動脈圧の低下が得られ、肺高血圧に続発する左右心室機能障害も有意に抑制された。組織学的には肺動脈中膜肥厚と肺細動脈筋性化および両心室の心筋細胞肥大と心筋間質線維化が有意に抑制された。分子生物学的(RT-PCR法)には肺と両心室のミネラルコルチコイド受容体、アンジオテンシンII1a型受容体、トランスフォーミング成長因子-β1の各mRNAの発現は有意に抑制された。エプレレノンはモノクロタリン誘発肺高血圧ラットにおいて、肺動脈や両心室のリモデリングを抑制し肺高血圧の重症化を防ぐことが示唆された。
|