2011 Fiscal Year Annual Research Report
歯根形成における上皮・間葉細胞の分化・相互作用・組織構築のパラダイムシフト
Project/Area Number |
22592028
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山本 恒之 北海道大学, 大学院・歯学研究科, 准教授 (80200822)
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Keywords | セメント質 / セメント芽細胞 / ヘルトビッヒ上皮鞘 |
Research Abstract |
本研究の目的は、1.ヘルトビッヒ上皮鞘の断裂機構、2.上皮鞘断裂後の上皮細胞の運命、3.マラッセの上皮遺残の細胞活性の変化、を解明することである。平成23年度は上記1、2の解明を重点に研究を行った。 1に関して 上皮鞘の断裂は、上皮細胞間のデスモゾームが破壊されることにより起こるのではないかと想定し、生後3週齢ラットの歯根未完成の上顎第一臼歯のパラフィン切片を抗デスモプラキン抗体と抗デスモグレイン抗体、およびデスモゾーム蛋白の分解酵素であるADAM10、コラゲナーゼの一種であるMMP-1、-2に対する抗体により免疫染色した。両蛋白とも未断裂のヘルトビッヒ上皮鞘に反応が認められたが、断裂にともない反応は弱くなる傾向がみられた。また上記酵素はいずれも上皮鞘にごく弱く、歯小嚢により強い強く認められた。以上から、ヘルトビッヒ上皮鞘は発生に伴い自壊してゆくというよりも歯小嚢細胞がなんらかの機序により酵素を上皮鞘細胞間に送り込み、それにより接着装置が破壊されて上皮鞘断裂が起こることが示唆された。 2に関して 上皮鞘は断裂後、マラッセの上皮遺残となるもの、およびアポトーシスにより死にいたるものの他に、近年;上皮間葉転換(EMT:Epithelial-mesenchymal transformation)によりセメント芽細胞となるものがある、という説が台頭してきた。EMTを確かめるために、セメント質基質に多量に含まれるDMP-1に対する抗体により免疫染色したところ、未断裂部の上皮鞘の反応は陰性であるが、並走する歯小嚢細胞は陽性であった。さらにケラチンによる抗体との二重染色を施したところ、ケラチン陽性細胞はDMP-1陰性であり、DMP-1陽性細胞はケラチン陰性であった。もし、EMTが起こっているのであれば、一時期両方に陽性の細胞が出現するはずである。以上の結果はEMTの可能性は低いことを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
遺伝子関連の研究を進めるための施設整備が当初の予定よりも遅れたため、in situ hybridizationが遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
免疫染色に関して、他の抗体も使用するなどしてさらに精度を高め、1.ヘルトビッヒ上皮鞘の断裂機構、および2.上皮鞘断裂後の上皮細胞の運命、についてより深く追究するとともに、免疫電顕による検索も開始する。また、3.マラッセの上皮遺残の細胞活性の変化、についても光顕免疫染色から実験を始める。早急に遺伝子関連設備を充実させてin situ hybridizationも手がけたい。
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Research Products
(1 results)