Research Abstract |
口腔は多くの異物に曝され,体内に侵入してくる細菌の最初の門戸となる.この口腔細菌叢解析を高精度に行い,どのように口腔微生物環境の恒常性が維持されているのかのメカニズムを明らかとすることを目的としている.口腔環境は複雑かつ変動が大きく,細菌種,特に古細菌については,正確なデータは存在していない.そこで,健常な口腔細菌叢と,う蝕,歯周病時の細菌叢との比較解析から,各状態に特異的な構成種を明らかとし,そのなかでも重要な役割を果たすと考えられる種についてはゲノム解析をすることで細菌叢による口腔恒常性維持機構の解明を目指している.まず平成22年度は,う蝕のない,または完全に治療した4~12歳の子と母の母子16組,32人の口腔細菌叢を調べるための試料を採取した.系統マーカー遺伝子としては,最も使用されている16SrRNA遺伝子を用いる.これまでにも細菌のみ,古細菌のみのuniversal primerが複数種類報告されているが,本研究では,当研究室で独自に開発した細菌および古細菌の両者を増幅可能なuniversal primerを用いている.本プライマーは,本研究で用いる高速シーケンサーRoche 454 FLX titatnium kitに適した約400bpを増幅するものであり,実際の試料を用いたDNA抽出方法およびPCR条件を決定した.これから,全サンプルにおいて高速シーケンサーに十分量のPCR産物を準備し,一人約32,000配列を取得,系統解析を行うことを予定している.現在,32試料のうち,半数について試料の調製を終了しており,調製後すぐにシーケンスを行なうことを可能としている.
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