2011 Fiscal Year Annual Research Report
転写因子Bcl11b変異によるマウス過剰歯形成と腸管組織肥機序の解析
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22592062
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
三嶋 行雄 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (30142029)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小幡 美貴 新潟大学, 医学部, 教務職員 (00420307)
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Keywords | 発現制御 / シグナル伝達 / がん抑制因子 / Bcl11b / p53 / Mdm2 / Lucレポーターアッセイ / 腸管組織の肥厚 |
Research Abstract |
Bcl11bは腸管クリプト内の幹細胞および前駆細胞であるTA細胞(transient amplifying cell)に発現が認められている。Bcl11b^<KO/+>マウスと野生型マウスに高線量のガンマ線(12Gy)を照射し、形態的な損傷が見られない24時間後と回復・再生期である4日後の腸管組織を増殖マーカーのKi-67で染色して比較した。その結果、24時間後と4日後ともBcl11b^<KO/+>マウスのクリプト細胞がより多く染色された。また、4日後では、Bcmb^<KO/+>マウスのクリプトの回復・再生期像が強く見られた。放射線射線によるp53陽性細胞数を比較したところ、Bcl11b^<KO/+>マウスの上昇レベルは野生型の約60%程度であった。このin vivoの結果は、Bcl11bがp53を介して細胞増殖を抑制する方向に作用する転写因子であることを示唆するものである。そこで、MDM2-p53経路に着目し、レポーターアッセイとChIP法によりBcl11bの影響について解析した。hMDM2プロモーターには、p53非依存性P1とp53依存性P2の二つのプロモーターがあり、それぞれのプロモーター領域をPCR法で増幅し、ルシフェラーゼ(Luc)レポータヴラスミドを作製した。HCT116細胞(p53野生型)にBcl11bベクターとコトランスフェクトしLuc活性を測定した。その結果、Bcl11bはP1プロモーターにはほとんど影響を及ぼすことはなく、それに対してP2プロモーター活性を著しく80%程度まで抑制した。この抑制効果は、以前調べたp21の抑制効果(約50%程度)より顕著であった。一方、HCT116細胞(p53欠損型)やp53応答配列を欠損したP2プロモーターを用いた場合、Bcl11bの抑制効果は減弱した。Bcl11bのhMDM2遺伝子領域への結合性をChIP法で調べた結果、hMDM2-P2プロモーター領域に最も強く結合し、5'上流領域や3'非翻訳領域には結合性を示さなかった。以上の結果から、Bcl11bはMDM2を標的遺伝子とし、p53依存性にMDM2-p53経路に影響を及ぼすことがin vitroの結果からも認められた。このことから、MDM2-p53シグナル伝達経路におけるBcl11bの関わりが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
転写因子としてのBcl11bの機能として、標的遺伝子がHDM2(Mdm2のヒトホモログ)であることを見いしたのは目的のひとつが達成されたと思われる。一方、マウスを用いた解析では、これといった進展がみられなかったことによる。
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Strategy for Future Research Activity |
転写因子としてのBcl11bの機能は、大腸がんやT細胞リンパ芽球性白血病(T-ALL)の患者で認められたBcl11bの点変異を利用することで、Bcl11bの機能ドメインや結合因子の検索ができ、シグナル伝達経路の解析が期待される。また、p53-Mdm2経路による細胞増殖のシグナル経路のマウスでの解析を行うため、Bcl11bとp53の欠損マウスを掛け合わせてBcl11b・p53の二重ヘテロ欠損マウスを作製し、腸管組織や胸線でのMdm2の発現への影響を調べることで、生体内でのBcl11bのシグナル伝達経路が解明されることが期待される。
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Research Products
(4 results)