2011 Fiscal Year Annual Research Report
先天性無痛無汗症患者の歯髄感覚と歯髄神経支配との関連
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22592117
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
三輪 全三 東京医科歯科大学, 歯学部附属病院, 講師 (30157705)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 哲二 鶴見大学, 歯学部, 教授 (10162447)
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Keywords | 先天性無痛無汗症 / 歯髄神経分布 / pre-pain / 痛覚 / 歯髄組織 / 透過型光電脈波法(TLP) / 歯髄血流の測定 |
Research Abstract |
平成23年度に研究代表者三輪は無痛無汗症の患者に同意を得てEPT(歯髄電気診)で歯髄の感覚検査を行った。新たな患者のpre-pain感覚(以下pp)閾値および同一患者者の経年的な測定値においてIV型とV型の歯髄感覚の相違を調べた。IV型の皮膚等にはC線維やAδ線維が欠如しているため痛覚が無いが、Aβ線維は存在することから歯でもppを感ずるであろうという予想に反し、ppも痛覚も無いことが判明した。これに対してC線維とAβ線維があるとされているV型については歯でもppを感じていた。このことから、ppの誘発はAβ線維由来というこれまでの定説は再考せざるを得ない可能性がある。一方、研究分担者の佐藤は無痛無汗症の患者から提供された抜去歯の組織切片を作成し、神経分布を調べた。今回はこれまでの免疫染色法(PGP9.5抗体およびルクソールファスト青染色)に加えて新たにβIII tubulin染色も行ったところ、HSANIV型では陽性線維はほとんど観察されず、あっても僅かであった。HSANV型では細い線維も含めてより多く観察されたが、健常者と比べて非常に少ない。すなわちIV型においても、Aβ線維のような太い神経が明瞭に確認できておらず、歯髄は皮膚などの神経分布とは異なる可能性もある。また、無痛無汗症のシンポジウムにおいて患者や他科(小児・整形・眼科・皮膚科など)の専門医と情報交換し、患者の会やホームページ等を通じて被検歯の提供を呼びかけているが、依然として健全歯を多く得ることはできなかった。2006年に出願した特許「歯髄腔内血液測定方法、装置及び歯髄腔内血液測定用アダプタ」が2012年1月20日に取得できたことにより、M製作所との診断装置開発をさらに進めることができる。抜歯前の歯髄の生死が診断可能となり、組織切片作製の効率も上がる。また、歯のviabilityすなわち歯髄の神経分布のみならず血流状態や血管分布についての観察も可能となり、無痛無汗症の歯の様態が正確に把握できるようになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の研究計画書にも記載したが、患者さんの健全歯が手に入らなければ、本疾患の歯髄の神経分布を明確に結論づけることができない。患者数が少ないので、得られる歯が少ないのは当然であるが、やっと手に入った抜去歯も、時間をかけて組織標本にして始めて失活していると分かるケースが多く、標本作製に時間を浪費してしまうことも多い。
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Strategy for Future Research Activity |
本年が最終年度であり、時間を節約するためには、観察歯の抜去前に生活歯か否かを診断しておき、健全歯のみを標本化する必要がある。IV型ではpre-painも痛覚もないため、抜歯前のEPT(歯髄電気診)が無効であり、研究代表者が開発したTLP(透過型光電脈波測定装置、2012年1月20日特許取得)で測定することにより客観的に歯の生死を診断できたケースもある。最終的に、解剖学的手法で歯髄の神経分布が明確に結論づけられない場合は、生理的手法、すなわち歯の刺激で開口反射(咬筋抑制)があれば速い潜時の神経(Aβ線維)の存在の証明、エピネフリン含有局所麻酔剤注射で、歯髄血流が減少すれば血管収縮に関与するC線維の存在の証明が得られる実験計画なども検討していき対応策とする。
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