2011 Fiscal Year Annual Research Report
歯周靭帯の再生を主軸にした新規歯周組織再生療法の開発
Project/Area Number |
22592123
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
藤井 慎介 大阪大学, 医学系研究科, 特任研究員 (60452786)
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Keywords | 歯根膜 / 再生 / ヒト / Wnt |
Research Abstract |
歯周靭帯の再生あるいは維持には、咬合時に負荷される機械的刺激(圧迫力および伸展力)が重要な役割を果たしていると考えられている。そこで申請者らは、機械的刺激を受けた歯根膜細胞が、歯周靱帯の再生あるいは維持に重要な因子を発現しているという仮説を立てた。このような因子について明らかにするために本研究では、機械的刺激として伸展力に着目し、この伸展力が負荷されたヒトプライマリー歯根膜細胞において発現が上昇する因子を検出し、その中から、歯周靭帯の再生を促進する能力を有した因子を歯周靱帯再生促進因子として明らかにする、ことを目的としている。 4種のヒトプライマリー歯根膜細胞に線維芽細胞伸展装置システム(STREX社)を用いて108%の伸展力を1時間負荷した。負荷した群と負荷を加えていない群の歯根膜細胞から抽出し、精製したmRNAを用いてマイクロアレイ法をおこない、伸展力の負荷により発現量の増加した遺伝子を216個検出した。 検出遺伝子群の中でWntの発現上昇を認めたことから、伸展力の負荷によりWntシグナル伝達が活性化されていることが示唆された。Wntは、細胞の増殖・分化・運動等を制御する分泌性蛋白質である。そこでWntが歯根膜細胞の運動能に与える影響、さらに歯周靭帯基質内にWntと結合し、その活性を調節する細胞外基質蛋白質が存在することを想定し、その単離を行った。Boydenチャンバー法を用いた実験系の結果、Wntが歯根膜細胞の運動能を促進することが明らかとなった。次に腫瘍細胞から調整した細胞外基質蛋白質の中でWntと結合する蛋白質をスクリーニングした。Far-western法を用いて、Wntが結合している細胞外基質蛋白質を検出し、その蛋白質を質量分析法にて同定した。 これらの結果は、歯周靭帯において機械的刺激がWntを介して歯根膜細胞の再生・維持を制御する可能性と、さらに歯周靭帯に豊富に存在する細胞外基質がWntの作用を制御するという新たな機構の端緒を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
マイクロアレイ法を用いて検出した遺伝子の中から、Wntに焦点を絞った研究を行ったところ、Wntが歯根膜細胞の運動能を促進すること、Wntと結合する細胞外基質蛋白質を明らかにできたため。
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Strategy for Future Research Activity |
Wntと細胞外基質蛋白質が結合することにより、Wntシグナル伝達に与える影響について検討する。精製Wntおよび精製細胞外基質蛋白質を用いた検討を行う。計画通りにならなかった場合、Wntおよび細胞外基質タンパク質を強制発現した細胞を用いて検討すること、Wntシグナル伝達が発育に影響を与えることが明らかとなっているアフリカツメガエルを用いた実験系を計画している。
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Research Products
(7 results)