Research Abstract |
歯数や口腔機能の変化がQOLに及ぼす影響について,長期的な観察を行った研究はこれまでほとんどみられない.そこで本年度は,高齢者の7年間の縦断的研究を行い,歯や口腔機能ならびにQOLの変化とそれらの関連について検討を行った 対象者は,2003年(ベースライン時)に歯の状態や咬合力,口腔関連QOLなどについて調査を行った大阪府老人大学講座の受講生の中で,2010年(フォローアップ時)に行われた追跡調査に参加した130名(平均年齢73.2歳)とした 調査項目は残存歯数,最大咬合力,日本語版Geriatric Oral Health Assessment Index (GOHAI)による口腔関連QOL,全身の健康状態に対する自己評価と家計に対する満足度とした.統計学的分析は,Wilcoxonの符号付き順位検定,Spearmanの順位相関係数の検定を行った.さらに,フォローアップ時のGOHAIスコアを目的変量,7年間の残存歯数と咬合力の変化等を説明変量として,重回帰分析を行った その結果,調査期間内に歯を喪失した人は全体の約60%で,残存歯数は平均23.7(SD:7.6)本から21.9(8.4)本に減少した.また,咬合力も平均665(378)Nから542(321)Nに有意に低下した.GOHAIスコアの平均は11.78(8.07)から11.06(8.28)となったが,有意差はみられなかった(P=0.113) さらに,フォローアップ時のGOHAIスコアを目的変量とした重回帰分析の結果,ベースライン時のGOHAIスコア,歯数の減少,咬合力の減少,健康状態の自己評価の低下が有意な説明変量となった 本研究の結果より,7年間で約60%の人が歯を失とともに咬合力が有意に低下しており,口腔機能の低下がQOLに影響を及ぼすことが示唆された
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