Research Abstract |
高齢者においては,加齢とともに歯数が減少し,口腔機能が低下することが多い,これまで横断的研究から,歯や口腔の健康状態とQOLとに関連があることが様々な国から報告されている.しかし,口腔機能の変化があった場.合にQOLが変化するか否かについて,長期的観察を行った研究はこれまでみられない.本研究では,5年間に歯と口腔機能の変化がみられた者とみられなかった者に被験者を分類し,それぞれのグループのQOLの変化を比較することによって,歯と口腔機能の維持や低下が高齢者のQOLに及ぼす影響について明らかにすることを目的とする. 対象者は,自立した生活を送っている60歳以上の高齢者で,大阪府老人大学講座にて講義を受けていた受講者とした.対象者には先に質問票への記入を指示した.質問票の内容は,性別,年齢,全身の健康状態の自己評価,経済状態の満足度,Geriatric Oral Health Assessment Index (GOHAI)による口腔関連QOLとした.その後,歯科・口腔機能検査を行い,残存歯数と最大咬合力を分析に用いた・調査項目は,ベースライン調査と追跡調査で同一とした. 本年は,GOHAIスコアと各調査項目との関連を横断的研究にて検討するため,Spearmanの順位相関係数の検定な1らびにMann-WhitneyのU検定を用いて比較した.ベースライン調査参加者410名と,追跡調査参加者155名を対象に分析を行った.その結果,両調査時とも年齢が高い,健康状態が悪い,残存歯数が少ない,最大咬合力が低いほどGOHAIスコアが高く,すなわち口腔関連QOLが低くなった. 次にベースライン時とフォローアップ時の各調査項目を比較した.その結果,両調査時のGOHAIスコアに有意差を認めなかったが,両者には強い正の相関を認めた.一方,咬合力は低下し,健康状態も低下することが明らかとなった.
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