Research Abstract |
九州大学動物実験倫理委員会の承認を得た後,18ヵ月齢,体重10kgの雌性ビーグル犬6頭の上下顎前臼歯部を抜去し,8週後に下顎左右前臼歯部にそれぞれ3本のインプラントを埋入した.荷重負荷装置を用いて,3本のうち1本を荷重なし(ON),残りの2本に10Nまたは50Nの2種類の側方荷重負荷を1Hz 1800cycle/日で週2回,3週間行った.また,埋入時,1週後,2週後に蛍光ラベリング剤を投与した.3週目に屠殺し,インプラント周囲組織を組織学的および形態計測学的に評価した.また,骨ブロックのCT撮影を行い,得られたデータから,即時荷重の状況を想定して接触を考慮したFEMモデルを作成し,インプラントとの界面における骨のひずみ解析を行った. FEM解析の結果,50N群におけるひずみ量は3700μεであり,Frostの理論における骨吸収を引き起こす領域に相当する値であった.組織学的には,他の群と比較してチタン表面への新生骨の直接接触が認められる部位は少なく,ネック部では骨吸収が進み,炎症性細胞の浸潤を認めた.また,蛍光染色ではインプラントネック部での骨形成は認められず,骨形成が認められる部位でもON群と同程度の蛍光強度であったことから,in vivoでの骨吸収部位とFEM解析でのひずみの集中部位が一致することが示唆された.それに対して10N群におけるひずみ量は200μεであり,Frostの理論における骨量増加を起こす領域に相当する値よりはやや低い値であるが,組織学的には感染所見はなく,骨接触状態も良好で,チタン表面に新生骨の直接接触が認められ,蛍光染色ではインプラントネック部から先端に向かって広い範囲で骨形成がみられた.さらに,骨接触率および骨密度はON群と比較して有意に高い値となった(図1).補綴領域では基本的に力を避ける考え方が従来主であったが,適正な荷重を与えることで,osseointegrationの獲得ならびに骨質の改善に寄与することが示唆された.
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