Research Abstract |
歯科治療に要する時間を明らかにすることは,医療経済において重要であり,治療の難易度,術者の熟練度,治療環境などによる影響を明らかにするために,実際のタイムスタディを様々な条件下で行うことには限界がある.そこで,まず総義歯治療における治療時間を明らかにするために,歯科医師が必要と意識している治療時間について患者の難易度ごとに調査を行った.今回はさらに,実際に患者資料を見たうえでの歯科医師の治療時間に関する意識を調査し,実際の治療時間との関係を明らかにし,模擬患者を用いたタイムスタディの確立を行うこととした. 当教室では補綴治療の対象である欠損歯,とくに無歯顎に対する模擬患者(ペーパーペイシェント)を用いた総義歯治療時間に関する歯科医師の意識調査を行ってきた).その結果,症型分類のLevelが上がるにつれて,必要な時間はかなり長くなり,資格取得者は全体に時間は短いものの,やはり症型分類の高いレベルには長時間を要することが示された.しかし,この研究では,実際の治療時間は測定されておらず,模擬患者も単に文字情報だけであったため,結果の信頼性が十分とは言えない. そこで,実際の治療のタイムスタディを行うと同時に,その視覚データ,検査情報を元にした模擬患者に対する多くの術者の治療時間に関する意識調査を行うことで,少ない労力で信頼性のあるデータが得られるのではないかと考えた. 本研究は,症例の難易度や歯科医師の熟練が総義歯治療に及ぼす影響を明らかにするために,実際の具体的資料に基づいた模擬患者に対する治療時間の意識と実際の治療時間を比較した.さらに,このようないわゆる「バーチェルタイムスタディ」とも呼ぶべき手法を確立することで,他の補綴診療を始め,広範囲の歯科診療の詳細なタイムスタディの可能性を明らかにしようとした.
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