2010 Fiscal Year Annual Research Report
細胞生物学的特性を示すセリシン含有セメントは創傷治癒効果を有する
Project/Area Number |
22592186
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
吉田 圭一 長崎大学, 病院, 講師 (70230729)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平 曜輔 長崎大学, 医歯薬学総合研究, 准教授 (40226725)
佛坂 斉祉 長崎大学, 医歯薬学総合研究, 講師 (90199513)
鎌田 幸治 長崎大学, 医歯薬学総合研究, 助教 (60264256)
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Keywords | セリシン / 細胞生物学 / 歯科用セメント / ヌープ硬さ / 創傷治癒 / コンポジットレジン |
Research Abstract |
まず,市販のセルファドヒーシブレジンセメントに、市販のセリシンホープ・コクーンを1.0、2.0、3.0、5.0、10.0wt%添加した、直径10mm、厚さ2mmのディスク状の試験片を作製した。セリシンを添加したことによるセメントのヌープ硬さの影響を検討するために、経時的(直後、5分、30分、1時間、3時間、1日、7日)に測定した。その結果、セリシンを1.0~5.0wt%添加した試験片は未添加の試験片と同様な硬化特性とヌープ硬さを示した。しかしながら、10.0wt%添加した試験片ではヌープ硬さが低下した。したがって、セリシンの添加量は5.0wt%が上限ではないかと考えられた。次に、セリシンを1.0~10.0wt%添加した試験片を作製し、1週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、6か月間水中に浸漬後、ヌープ硬さを測定し水中浸漬による劣化程度を検討した。その結果、1.0~5.0wt%添加した試験片では、未添加のコントロールと同様、6ヶ月もヌープ硬さが低下しなかったのに対し、10.0wt%添加した試験片では、3ヶ月後からヌープ硬さが低下しコントロールと比較して有意に低い値を示した。以上のことから、セルフアドヒーシブレジンセメントに添加するセリシンは、5.0wt%が適切であると考えられた。 セリシンを添加したアドヒーシブレジンセメントがどの程度創傷治癒効果があるか、ラットを利用して評価した。全身麻酔下で上顎中切歯の歯肉縁エナメル質に、5.0wt%添加したセメントを塗布し硬化させた。次に、唇側歯肉縁から幅が約1mmで深さが約0.5mmの歯肉を切除し、経日的(1、3、7、14日)に歯肉の回復状態を肉眼的に観察した。反対側同名歯も同様に歯肉を切除しコントロールとした。その結果、7日後にはコントロールもセリシンを添加したセメントを塗布したものもほぼ正常に歯肉は回復した。しかしながら、それらの回復状態の差は認められなかった。創傷治癒効果に関しては、セメントの種類や添加方法などを今後検討する必要がある。
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