Research Abstract |
iPS細胞による歯科用モノマーの発生毒性スクリーニング試験法を開発する目的で,計画にしたがって,まずマウス由来iPS細胞とES-D3細胞の3次元で安定した細胞分化が可能な培養系の構築を行った. マウス由来のiPS細胞をEmbryonic Stem Cell Test(EST)法で使用するES-D3細胞用培地でEmbryo Bodyを作製した.セルカルチャーインサートを用いてマウス由来の市販フィーダー細胞を用いて,ガラス繊維およびコラーゲンゲルをスキャフォードとして10日間細胞分化させた.その結果,ガラス繊維でコラーゲンゲルより若干高い74%のEmbryo Bodyで心筋の鼓動が観察された.また,ES Cell Characterization Kit(Chemicon, Millipore, USA)を用いても細胞分化を確認した.なお,iPS細胞ではノンフィーダーではほとんど細胞分化が確認できなかった. 次に,上記の3次元培養法で最も安定して高い細胞分化レベルが得られた組み合わせであるガラス繊維を用いた実験を行った.HEMA,EGDMA,TEGDMA,EGDMA,4-META,4-AETA,4-MET,4-AETをそれぞれセルカルチャーインサート内のガラス繊維上に置き,10日間細胞分化させた,その結果,HEMAで80%,EGDMAで72%,TEGDMAで45%,4-METAで67%であった.しかし,4-AETA,4-METと細胞分化率が低下し,4-AETでは分化率がわずかに5%を示した.この理由は4-AETの構造上,4-METAや4-AETAと比べて培養液への溶解性が高くpHも低かったためであると考えられた.なお,コラーゲンゲルについても細胞分化レベルが低かったものの同様の結果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的であったマウス由来のiPS細胞がES-D3細胞よりやや不安定な細胞分化レベルであったが,3次元培養法の改良を重ねた結果,当初の目標どおりに接着性モノマーを用いて評価することができた.また,鍵となるフィーダー細胞についてもマウス由来の市販品を用いて十分に機能させることが可能であった.総合的に概ね順調と考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
EST法プロトコルでは単一の化学物質の発生毒性レベルしか評価できない.しかし,実際の製品は単一の化学物質ではないことが多く,複数の成分の組み合わせは相乗作用もあり,それぞれの単一成分の平均にはならない可能性も大きい.そのため,実際の製品についてしらべる必要性が大きい.元々の計画にしたがって,最終年度は前年度までに培った3次元培養法を用いて,多数の実際の製品について比較する.
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