Research Abstract |
血管障害によりもたらせる虚血負荷は,脳組織にとって最も重篤な病態のひとつであり,神経細胞のみならず,グリア細胞などの脳組織を構成するさまざまな細胞種が虚血により細胞死あるいは傷害を被る.一方,胎生期のみならず成体脳においてもNeural stem/progenitor cells(NSPCs)が存在し,虚血性血管障害により側脳室のSubventricular zoneや海馬歯状回のSubgranular zoneから遊走分化するといわれ,虚血に対し抵抗性であることが報告されている.さらに,最近,虚血負荷によるneocortexや大脳皮質におけるNSPCが報告されているが,正確な起源については不明な点が多い.我々は,これまでに虚血中心にNSPCsが発現し,この細胞が増殖,分化可能な神経幹細胞であることをin vivoおよびin vitroで証明し,脳梗塞進展過程でカスパーゼによりアポトーシスを起こし,脳虚血により成熟細胞やグリア細胞だけでなく,その領域で発現してくる幹細胞にも影響を与える可能性を示唆した さらに,一過性脳虚血モデルを用いた動物実験において,再灌流障害や虚血耐性現象についてはこれまで多く報告されているが,再灌流後,梗塞発現に至るまでの時間や虚血負荷時間について詳細に検討した報告はなく,神経再生の面から梗塞発現閾値を解明することは極めて重要である 以上の観点から,平成22年度は,リドカインによる虚血耐性現象獲得のメカニズムを解明する前実験として再現性よく中大脳動脈領域に脳梗塞を作成できるマウス脳梗塞モデルを用い,一過性脳虚血負荷による梗塞発現閾値を明らかにし,一過性脳虚血負荷後の梗塞進展過程における大脳皮質神経幹細胞の発現の有無について検討した
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