2011 Fiscal Year Annual Research Report
乳歯歯根膜由来細胞株の樹立および歯根膜細胞による新しい歯周組織再生法の開発
Project/Area Number |
22592296
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
長谷川 智一 徳島大学, 病院, 講師 (50274668)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石崎 明 岩手医科大学, 歯学部, 教授 (20356439)
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Keywords | 乳歯 / 歯根膜 / 株化 / hTERT / 再生医学 / SDF-1 |
Research Abstract |
「研究目的」 本研究目的は、日常の小児歯科臨床において通常行われている乳歯に含まれる細胞(乳歯歯根膜細胞)によって再生医学研究のための材料を作成すること、すなわち乳歯歯根膜細胞株の樹立が第1目標である。そして第2目標として歯周組織再生のために、乳歯歯根膜細胞の再生医学研究の可能性を検討することである。 「研究成果」 乳歯歯根膜細胞の安定的供給源として、昨年度、hTERTによる不死化した乳歯歯根膜細胞株樹立の報告を行った(Hasegawa T, et al.Int J Mol Med 26 (5) : 701-705, 2010.)。この研究業績と乳歯からの分離細胞による血管内皮細胞の誘導能の報告(Hasegawa T, et al.Exp Ther Med, 1 (2) : 337-341, 2010.およびExp Ther Med, 1 (3) : 477-480, 2010.)を合わせ、岩手医科大学同窓会圭陵会の学術賞を受賞した。 さらに今年度はこの細胞株を使用して歯周組織再生の可能性の報告を行った。乳歯歯根膜細胞によるstromal-cell derived factor-1 α (SDF-1)の発現調節機構の解析を行って、fibroblast growth factor 2 (FGF-2)およびtransforming growth factor-β1 (TGF-β1)によるdifferential effectの報告を行った(Hasegawa T, et al.Int J Mol Med, 2012, in press.)。この研究成果によって第49回日本小児歯科学会大会の学術賞"LION AWARD"を受賞した。以上2つの学術賞の受賞から、本研究成果の評価は高いと考えられる。 具体的には永久歯と交換し、抜歯もしくは脱落して廃棄される乳歯より細胞を分離し、分離細胞を効率的に利用するすることで再生医療に応用可能であることを示唆した。骨髄からの間葉系幹細胞の分離は全身麻酔下においてドナーに疼痛など浸襲性の高い処置である。しかし乳歯の抜去歯から再生医療の材料を分離できれば、経済的にもドナーの負担的にも安価な材料になり得る。また自分自身の細胞であるため、免疫学的にも問題がないと考えられる。 さらに特筆すべきは、患者自身の器官・組織から幹細胞を分離できなくても、患者自身の体性幹細胞の効率的使用の可能性を示唆した。分離し、移植する細胞に適切な処理を行えば、再生医療に効率的な応用可能な細胞を作成することができる可能性を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
初めの1年間で細胞株樹立を論文報告でき、昨年度の研究業績により岩手医科大学同窓会圭陵会の学術賞を受賞した。さらに過去の研究業績と合わせて第49回日本小児歯科学会大会の学術賞"LION AWARD"を受賞した。2つの学術賞を受賞できたことから本研究成果の評価は高いと考えられた。 また本研究課題で作成した細胞株を使用した歯周組織の再生医学研究について、既に原著論文のacceptを得ている。さらに関連する研究においても解析待ちの新しい歯由来の細胞株を得ていること、共同研究において研究論文計4報、学会発表計5回あり、研究の進行状況および業績の両面から十分だと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
歯周組織再生のための歯根膜機能の解析結果として、stromal-cell derived factor-1 α (SDF-1)による間葉系幹細胞および血管内皮前駆細胞の遊走誘導による再生促進モデルが考えられた。今年度はfibroblast growth factor 2 (FGF-2)およびtransforming growth factor-β1 (TGF-β1)によるSDF-1の発現調節機構を詳細に解析した。 実用モデルの構築として、歯根膜細胞におけるSDF-1の発現促進とその維持を目的した解析を行う予定である。具体的にはnegative feedback loopを形成するSmad7,またSmad7と連動して作用するユビキチンリガーゼであるsmurf1/2, arkadiaの発現調節を考えている。この解析準備のため、それぞれのsiRNA, expression vectorの構築中である。
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Research Products
(12 results)