2011 Fiscal Year Annual Research Report
矯正力応答性破骨細胞形成における歯根膜細胞、骨芽細胞の役割分担の解明
Project/Area Number |
22592298
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
清水 典佳 日本大学, 歯学部, 教授 (40154299)
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Keywords | メカニカルストレス / 破骨細胞 / RANKL / 歯根膜細胞 / 骨芽細胞 / PGE_2 |
Research Abstract |
我々の今までの研究で、歯根膜細胞にメカニカルストレス(MS)を加えてもRANKL発現は亢進せず、骨芽細胞へのMS負荷では強い発現の亢進が認められた。そこで、矯正力に応答した骨吸収には、骨芽細胞の産生するRANKLが重要な役割を演じると考え、両細胞の役割分担の分子メカニズムについて検討している。 小臼歯から得た歯根膜細胞に2.Og/cm^2荷重を24時間加えると、COX-2遺伝子発現は顕著に亢進したが、RANKL発現は亢進しなかった。そこでCOX-2を介して産生されるPGE_2(10^<-5>~10^<-11>M)を24時間、ヒト歯根膜細胞とヒト正常骨芽細胞に添加してRANKLの遺伝子発現を検討したところ、MSと同様に歯根膜細胞ではほとんど発現は見られなかったが、骨芽細胞では顕著に発現が亢進していた。さらに24時間PGE_2を添加後、新培養液に交換し、破骨前駆細胞(RAW264.7)と共培養すると、骨芽細胞との共培養では歯根膜細胞との共培養に比べ5倍の破骨細胞様細胞が形成されていた。さらにsmall interfering RANKLを導入したヒト骨芽細胞との共培養では、破骨細胞様細胞形成能は失われていた。このことからMSを受けた歯根膜細胞の破骨細胞形成能は弱く、歯根膜細胞の産生したPGE_2が骨芽細胞を刺激し、RANKL発現を介して破骨細胞形成を促進すると考えられ、上記結果の検証実験を数回行い、同様の結果が得られたため、研究成果をArch Oral Biolに投稿しRevise中である。その後、同個体からの歯根膜細胞及び骨芽細胞を用いての検証を行うため、第三大臼歯抜歯時に得た歯槽骨と小臼歯の歯根膜を培養し、歯根膜細胞にMSを加え、そのconditioned mediumを別に培養した同個体の歯根膜細胞及び骨芽細胞に添加しRANKL発現を調べ、COX-2特異的阻害剤NS398存在下でも同様の検討を行っている。さらにconditioned mediumを用いた同様の実験において、破骨前駆細胞との共培養を行い、破骨細胞形成能を調べることで、個体差を排除した矯正力応答性破骨細胞形成機転を解明できると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまでの研究では、同個体の歯根膜細胞と歯槽骨骨芽細胞を同時に準備するのが困難であったため、骨芽細胞はヒト正常骨芽細胞を購入して検討した。歯槽骨をドリルして採取し培養しても十分な細胞が得られないことから、第三大臼歯抜歯時に得られた歯槽骨を培養し骨芽細胞を得ることとした。そのため、同個体から得た細胞を用いた分子メカニズムの検討が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
同個体の骨芽細胞が十分に得られれば、MSを加えた歯根膜細胞のconditioned mediumを同個体の歯根膜細胞及び骨芽細胞に加え、MSを負荷した歯根膜細胞が産生する液性因子を介した破骨細胞形成に関する分子メカニズムを解明できると考える。また、現在、破骨前駆細胞としてRAW264.7を用いているが、この細胞はラット由来であるため、ヒト由来の細胞を用いた破骨細胞形成能を測定できる実験系を検討中である。
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