2010 Fiscal Year Annual Research Report
歯周再生治療に有用な多層性幹細胞シート移植材の開発
Project/Area Number |
22592315
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
安部 達也 長崎大学, 病院, 講師 (80271112)
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Keywords | 移植・再生医療 / 再生医学 / 細胞・組織 / 歯学 / 幹細胞 / 接着斑 |
Research Abstract |
歯周病の治療では歯周組織の再生が大きな目標である。既存の歯周再生療法は適応症が限られるため、新たな治療法の開発が望まれている。間葉系幹細胞(以下、MSCと略す)シートは歯周再生療法に有用な移植材と考えられる。移植効果を高めるために細胞を多層性に高密度に増殖させる必要がある。多層化増殖は、線維芽細胞では接着斑の形成に依存するが、MSCでは不明な点が多い。接着斑はTGF-β1の刺激によりROCKを介したアクトミオシン収縮性フォースが発生し形成される細胞付着装置である。そこで今回、細胞高密度化MSCシートを作製する目的で、コンフルエンスなMSCの増殖に及ぼすフォースと接着斑の働きについて調べた。コンフルエンスな健常ヒト骨髄由来MSCをTGF-β1添加の多層化培地(TAF培地と命名)で培養して、細胞数をDNA量の測定で、増殖をBrdUの取込みで解析した。その結果、TAF培地はMSCの増殖を刺激した。TAF培地にROCK阻害剤Y-27632を添加した条件[Y(+)]と添加しない条件[Y(-)]で培養すると、細胞数は2日目で差はなく、4日目でY(+)の方が多かった。Y(-)では接着斑が誘導され、4日目で細胞シートはウェルから剥離した。一方、Y(+)では接着斑形成が抑制され、4日目で細胞シートは剥離しなかった。以上のことから、フォースと接着斑はコンフルエンスなMSCの増殖に必要ではなく、むしろ細胞シートの剥離を誘発して増殖を抑制することが示された。従って、ROCK阻害剤を用いてフォースと接着斑を抑制すると増殖は抑制されず、細胞高密度化MSCシートが作製できる。今回の研究で多層性MSCシート移植材の作製方法が確立できたことは、今後のMSCを利用した歯周再生療法の開発にとって意義深い。
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Research Products
(2 results)