Research Abstract |
メタボリックシンドロームは,内臓脂肪蓄積に加え,高血圧,糖尿病(耐糖能異常),脂質代謝異常などの複数の危険因子が重積した状態であり,脳梗塞,冠動脈疾患などの動脈硬化性疾患の発症リスクが高まった病態である.一方で,歯周病の存在とメタボリックシンドロームが関連することが,臨床的に報告されている.本研究では,歯周病とメタボリックシンドロームの関連について実験的に直接証明する目的で,実験的歯周炎を惹起し,メタボリックシンドローム構成因子に対する影響を検討した.5週齢の雄性Sprague-Dawleyラットをコントロールラットと歯周病誘導ラットの2群に分け,歯周病誘導ラットに対し両側上顎第2臼歯に絹糸を巻きつつけ,プラークの停滞しやすい環境を人工的に作ることにより,歯周病を誘導した.実験的歯周病惹起2週間後の評価では,(1)HE染色により歯周病側の歯肉における炎症性細胞浸潤が著明に増加していること,(2)歯肉における遺伝子発現の検討により,歯周病側において炎症性サイトカインであるTNF-α,iNosの遺伝子発現が有意に増加していること,(3)マイクロCT撮影により歯周病側の歯槽骨が吸収されていることを確認した.全身状態を確認する目的で,コントロールラットおよび歯周病誘導ラットの体重,血糖血清脂質について歯周炎惹起1,2,4週間後に検討したところ,体重については有意差を認めなかったが,実験的歯周病惹起4週間後の血糖は,歯周炎誘導群において有意に高かった.血清脂質については,総コレステロール値については,有意差を認めなかったが,トリグリセリド値については歯周炎誘導群において有意に高かった.以上の結果は,実験的歯周炎惹起が直接的に耐糖能異常,血清脂質異常を誘導したことを示しており,歯周炎がメタボリックシンドロームに対し直接的に影響することを示唆している.
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Strategy for Future Research Activity |
実験的歯周炎惹起により,血液学的検査よりメタボリックシンドロームが誘導されることを確認した.今後は,動脈硬化,高血圧等,動脈系の病理組織学的検査,生理機能検査を中心に行っていく予定である.病理組織学的検査については,歯周組織において詳細に検討済みであり,技術的問題はない.血圧測定器については,購入し測定する予定である.
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