Research Abstract |
幼若ブタの歯胚から抽出されたエムドゲイン・(以下,EMDと略す)は,歯槽骨吸収の著しい歯周炎患者の歯周組織再生,とくにセメント質を誘導し歯周組織の再生を促す薬剤として現在広く臨床応用されている.しかし,現在市場に流通しているEMDは生物由来材料のため,未知の病原体の問題点を払拭できず息者からの拒否感があるのも事実であり,生物に由来しない合成ペプチドの開発が望まれている 今回,EMDの基礎研究から得た成果をもとに作製した新規合成ペプチドに対する影響について,創傷治癒過程における重要な歯周組織構成細胞であるヒト歯肉上皮細胞に及ぼす影響について検討した ヒト歯肉上皮細胞は,歯周外科時に採取された歯肉から樹立されたepi4と命名されたヒト歯肉上皮細胞株を実験に使用し,新規合成ペプチドのヒト歯肉上皮細胞に対する影響は,細胞増殖,細胞接着および細胞遊走について検討した 合成ペプチドを100ng/mlの濃度で培地に溶解させヒト歯肉上皮細胞に応用した。細胞増殖に関しては,1,3,24,72時間培養し測定した.細胞接着に関しては,1時閥後の細胞接着を測定した.細胞遊走に関してはBoyden chamber法を改良して行い,1,4,8時間後の細胞遊走を測定した。 細胞増殖に関しては,1,3,24時間において合成ペプチド刺激群において対照群に比べて有意に低かった.応用後72時間においては,合成ペプチド刺激群は対照群に比べて低いものの有意差は認められなかった.刺激時間に応じて経時的に有意な細胞増殖傾向を示した.細胞接着に関しては,合成ペプチド刺激群において対照群に比べて有意に低かった.細胞遊走に関しては,全ての刺激時間で合成ペプチド刺激群において対照群に比べて有意に高かった これらの結果から,EMD由来の合成ペプチドは歯周組織再生の過程で創傷治癒を促進するヒト歯肉上皮細胞の細胞増殖,細胞接着および細胞遊走という点で有用であるということが示唆された。
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