2011 Fiscal Year Annual Research Report
咀嚼刺激による脳由来神経栄養因子を介した生活習慣病の抑制効果に関する研究
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22592334
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
河原 和子 広島大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助教 (20034209)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
二川 浩樹 広島大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (10228140)
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Keywords | 咀嚼誘導 / ラット / 肥満マウス / 飲水量 / 多飲性 / 糖尿 / BDNF |
Research Abstract |
生活習慣病と歯周病の関係が次々明らかにされているが、口腔機能と生活習慣病との関係についての報告は少ない。我々は生活習慣病予防の要である肥満抑制の一端を歯科医療が担う新たな経路を見出したいと考え、糖代謝の改善効果と咀嚼により発現が誘導されうる脳由来神経栄養因子BDNFに着目している。血糖値を直接低下させるのはインスリンのみであるが、最近、肝臓の求心性神経シグナルが膵臓β細胞のインスリン分泌を亢進することが報告された。 I.本年度は咀嚼関連の神経シグナルによる糖代謝への影響を生理的条件下で捉える実験法の開発を「目指し、ラット20匹余を用いて自発かつ持続的な咀嚼の誘導法の確立を試みた。各咀嚼誘導法につき4匹以上を用いて2回以上測定した。結果の概略は1.ラットは集中力や味・香りの嗜好に明白な個体差を示した。2.数種の木片、「複雑な形状の囓り棒、囓り堅紙、特注の香料・無カロリー飼料は、初回はどのラットも囓るが、週齢が進むと飽き易く持続性が減じた。3.絶食後は週齢を問わず4gのペレット1ケを完食した。4.高週齢でも氷砂糖は好んで囓った(6/9匹が15分の観察中に10分以上)。研究に先立ち小動物に対する持続的咀嚼誘導法を広く探したが報告は見あたらなかった。実験小動物にストレスを負荷せずに、自発かつ持続的な咀嚼の誘導法を得たことは意義深い。 II.糖尿病動物では肝臓のBDNFと特異受容体の発現が亢進するとの報告をもとに、TSOD肥満モデルマウスを同質の固形飼料と粉餌で飼育した。8匹ずつの集団飼育で毎週2回測定したところ、糖尿病の特性である多飲性について、尿糖発現が顕化した時期以降は予想に反し、常に固形飼育>粉餌飼育マウスの飲水量であった。この結果からは糖代謝制御に粉餌の口中への取込~嚥下に至る機能の関与もうかがえた。今後はまず個別飼育下で飲水量と食餌量を確認し、血糖値等との関係を解析する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
BDNFの糖代謝改善効果についてはいくつか報告がある。本課題において、咀嚼の糖代謝への関与についてBDNFを柱として検討するに当たってまず、体液を介した遠隔作用か、それとも組織内/or組織、中枢の神経応答に焦点を絞るかという点で、H22年度の咀嚼刺激によるヒト血液と唾液中BDNFレベル変化の検討から後者に重点を置くと判断した。従って動物実験ということで、H23年度はストレス負荷に依らない自発的咀嚼の誘導法を検討し、2/3の小動物が10分を超えて持続的に咀嚼する誘導法を得た。また肥満モデルマウスの集団飼育下、食餌性状によって糖尿病特性の多飲性の程度に差が出ることが示され、今後の研究の進展に繋がる重要な結果を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
1.肥満モデルマウスを咀嚼負荷(食餌性状)異にして個別飼育し、多飲性の確認の他、摂餌量、血糖値、体重の関係を詳しく解析する。 2.咀嚼負荷(食餌性状)異にして飼育した肥満モデルマウスから血液を採取し、インスリン系について解析する。 3.これらのマウスから採取した膵臓サンプルにおいて、ふたつの飼育マウス間で示された差異が、主としてβ細胞のインスリン産生能に依るのか、β細胞の存在数に依るのかを検討する。 4.糖尿病モデル動物では肝臓でBDNFと受容体の発現が亢進するといわれるが、食餌性状を異にするマウス間においてこれらの発現に差異がみられるかどうかによって、2の結果にBDNF系が関与する可能性の有無を検討する。
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Research Products
(6 results)