2011 Fiscal Year Annual Research Report
高齢者の咀嚼能力の向上による全身の健康状態改善・医療費抑制効果についての介入研究
Project/Area Number |
22592357
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Research Institution | National Institute of Public Health |
Principal Investigator |
守屋 信吾 国立保健医療科学院, 生涯健康研究部, 上席主任研究官 (70344520)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三浦 宏子 国立保健医療科学院, 統括研究官 (10183625)
越野 寿 北海道医療大学, 歯学部, 教授 (90186669)
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Keywords | 高齢者 / 地域 / 咀嚼能力 / 栄養状態 / 体力 / 医療費 |
Research Abstract |
咀嚼能力と医療費との関係ならびに、介入研究により咀嚼能力を向上させることが全身の健康状態に及ぼす影響を明らかにするための調査を行った。行政機関の協力のもと、調査参加者(n=702)の国保レセプトデータを用いて、咀嚼能力との関連を調べた。咀嚼能力良好群では一人あたりの1年間の入院にかかる医療費が約15万円であるのに対し、咀嚼能力不良な者では約23万円で、他の背景要因を調整した上でも有意な関連が成立していた。介入研究は歯科医師会の協力のもと実施され、歯科治療が必要な者へ受診勧奨し1年後に、筋力・身体平衡機能について評価を行った。121名が介入研究に参加した。この121名の握力は介入前28.1±7.4kg、介入後27.5±7.6kg(P=0.038)、開眼片足立ち秒数は介入前33.2±33.2秒、介入後30.1±34.4kg(P=0.109)で、握力は有意に低下していた。介入前後で咀嚼能力が改善しない者と改善した者に分けて検討すると、改善しない103名で、握力は介入前28.8±7.4kg、介入後27.9±7.8kg(P=0-005)、開眼片足立ち秒数は介入前35.9±34.2秒、介入後30.2±33.8kg(P=0.016)で、握力、開眼片足立ち秒数ともに低下していた。一方、咀嚼能力の改善した17名で、握力は介入前24.0±6.5kg、介入後247±5.5kg(P=0.169)、開眼片足立ち秒数は介入前17.4±21.4秒、介入後29.8±39.5kg(P=0.023)で、握力は維持され開眼片足立ち秒数は有意に改善していた。歯科治療による咀嚼能力の改善は、筋力の維持や身体平衡機能の改善に重要な役割を果たすことが示された。咀嚼能力を維持改善させることは、ADLの低下予防につながる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度に明らかにした咀嚼能力と全身の健康状態との有意な関連性の結果ものと、咀嚼能力の低下した者に歯科的介入を実施しその効果を判定した。その結果、咀嚼能力の向上は、身体機能の向上・維持に何らかの役割を果たす可能性を示唆する結果が得られた。以上より、研究は計画どおりに進展していると考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの成果を踏まえ、歯科的介入による咀嚼能力の向上が全身の健康状態のみならず、医療費に及ぼす影響を明らかにする。さらに、咀嚼能力の変化と栄養状態・体力・医療費との関係を共分散構造分析法を用いて、それぞれの因果関係を明確にする。
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Research Products
(9 results)