Research Abstract |
本研究の目的は,(1)新卒看護師がみる理想と現実の職場環境の差と(2)新卒看護師の看護実践能力と職場で求められる看護実践能力の差が,就職後1年間でどのように変化し,またこれらの差がどのように離職願望の強さと関連しているかを追跡調査し,新卒看護師の離職防止策を考案することである.研究の第1段階として,平成22年度は看護実践能力評価尺度の開発を行った。開発手順と結果は次の通りである。 1.初めに概念分析法を用いて,看護実践能力の定義と構成要素を明らかにした。分析対象は2000年から2009年に出版された60英論文であった。この結果,看護実践能力とは,「看護実践における専門的責任を果たすために必要な個人適性,専門的姿勢、そして専門知識と技術に基づいたケア能力という一連の属性を効果的に発揮できる能力である」ことが明らかになった。またその構成要素には,性格,思考力,倫理的看護実践,専門的成長の促進行動,他の医療専門職者と協働する能力,人間関係形成能力,教育・指導能力,看護管理能力,看護の安全と質を保証する能力,そして看護展開能力が含まれた。 2.上記概念分析を基に,89項目からなる看護実践評価尺度を開発し,その妥当性と信頼性を検証した。まず尺度項目の内容的妥当性については,Index of Content Validityを用いて6名の看護教育・管理者によって検証された。その結果,79項目を尺度に残した。次に23名の看護師を対象にプレテストを行い,尺度を修正した。最後に331名の看護師から得られたデータ(有効回答返還率55%)を墓に探索的及び確証的因子分析を行い,尺度の構成概念を検証した。その結果,5因子(スタッフ教育・管理能力,倫理的実践能力,一般適性,看護を提供する能力,専門的成長能力)36項目からなる尺度が生成された。尺度全体のCronbach's alphaは0.967で高い内的整合性を示した。また,尺度得点は経験年数と弱い性の相関を示し,経験年数との基準関連妥当性が確認された。
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