Research Abstract |
A市産科クリニックで出産した母親を対象とし,産後1年時にエジンバラ産後うつ病尺度(EPDS:20項目,0~3点配点,9点以上でうつ状態を疑う)とOlsonの円環モデルに基づいた家族機能測定尺度(凝集性・適応性の2因子構造,各10項目,1~5点配点)を用い調査した。退院前の母親に対して,研究の主旨・目的・方法,参加は自由意志で,診療とは無関係な事,個人を特定しない事,中止可能な事を文書及び口頭で説明し同意者に郵送した。EPDS9点以上を高得点者,未満を低得点者とし,家族機能の凝集性・適応性は各4次元に分け特徴を検討し,精神状態との関連を見た。統計学的解析はPASW Statistics ver.18を用いた。分析対象者は96名(回答率43.8%),平均年齢31.0±4.0(範囲17~40)歳,有職率20.8%,初産婦60.4%,自然分娩91.7%,児は全員健康だった。EPDS平均得点は4.4±3.1(範囲0~13)点,高得点者10人(10.4%)であった。凝集性平均得点は39.9±7.1(範囲11~50)点,適応性32.7±52(範囲19~50)点であった。EPDS高低得点群別の凝集性と適応性の次元毎の出現数は,共に有意差が見られた(χ^2検定,p<0.001~0.01)。以上のことから,産後1年時の母親が捉える家族機能は,より凝集性が高く秩序が低いタイプで,この時期の家族は育児を主として家事等家族課題に共同で取り組むことで,より絆が強まると共にてんやわんやな状態にあると推測された。うつ傾向と家族機能には関連があり,産後の母親の精神安定には家族の絆が強くまとまることと舵取り機能が柔軟なことが重要である。今年度9月~3月までの期間に父親も入れ161組の協力を得たので,次年度も引き続きデータ収集し,今後は父親について分析する。
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