2011 Fiscal Year Annual Research Report
子育て適応期における父母の精神状態と家族関係に関する研究
Project/Area Number |
22592485
|
Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
山川 裕子 佐賀大学, 医学部, 准教授 (00259673)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤本 裕二 佐賀大学, 医学部, 助教 (30535753)
中島 富有子 福岡女学院看護大学, 看護学部, 助教 (80592980)
|
Keywords | 生後1年間 / 父母 / 家族関係 / 子育て / 精神状態 / EPDS / 円環モデル |
Research Abstract |
質問紙調査の分析第一弾として,母親のみを分析対象とし産後1年時の母親のうつ傾向と家族機能との関連を検討した。エジンバラ産後うつ病尺度(EPDS)及びOlsonの円環モデルに基づく家族機能測定尺度(凝集性と適応性の2因子構造)との関連を見た。EPDS9点以上を高得点者,未満を低得点者とし,家族機能の凝集性・適応性得点を各4次元に分け特徴を検討する。統計学的解析はPASW Statistics ver.18を用いた。倫理的配慮として,退院前の母親に対して,研究の主旨・目的・方法を文書及び口頭で説明し,同意者に郵送した。郵送時に再度,参加の自由性と診療と無関係な事,個人を特定しない事,中止可能な事を説明した。結果として,分析対象者96名(回答率43.8%),平均年齢31.0±4.0(範囲17~40)歳,有職率20.8%,初産婦60.4%,自然分娩91.7%,子どもは全員健康であった。EPDS平均得点は4.4±3.1(範囲0~13)点,高得点者10人(10.4%)であった。凝集性平均得点は39.9±7.1(範囲11~50)点,適応性32.7±5.2(範囲19~50)点であった。凝集性は[膠着],適応性は[柔軟]が最も多かった。EPDS高低得点群別の凝集性と適応性次元の出現数に有意差が見られた(X2検定,p<0.001~0.01)。以上のことから,多くの母親が捉える家族機能はより凝集性が高く秩序が低いタイプで,この頃の家族は育児を主として家事等家族課題に共同で取り組むことで,より絆が強まると共にてんやわんやな状態に変化したと推測された。うつ傾向と家族機能には関連があり,母親の精神安定には家族の絆が強く纏まることと舵取り機能が柔軟なことが重要である。 面接調査では,母親17名と父親16名(うちペア13組)から協力が得られ,今後はM-GTA法を用いて分析していく。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
質問紙調査は,当初予定とほぼ同じ回答数が得られており,平成24年3月をもって調査を終了した。後は,生後1年までの前向き継続調査を遂行するのみとなっている。面接調査は,当初予定者よりも多い回答者を得られた。以上のことから,今年度の研究はおおむね順調に進展していると言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は,データ分析が課題である。質問紙調査のデータは,5時点の早い時期の順で,来年度中に分析を終える方針である。その際,研究主テーマである子どもが誕生後1年間の父母の家族機能別に精神状態を分析する視点が最優先となる。次に,面接調査では質的データをM-GTAを用いて分析する。現時点ではある程度まとまったデータは得られているが,今後1年間はデータの目的的サンプリングによるデータ収集を並行しながら,カテゴリーを抽出していく必要がある。しかしながら,子どもが誕生後の父母の家族機能が1つのタイプに偏っており,他のタイプの目的的サンプリングができないことが予測される。家族機能のタイプ別の分析ではなく,他の視点で分析する等,検討する必要がある。
|