2010 Fiscal Year Annual Research Report
母性愛を育む看護介入法を探索するー脳科学的基盤の解明からー
Project/Area Number |
22592486
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
荒木 美幸 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 准教授 (10304974)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西谷 正太 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助教 (50448495)
大石 和代 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (00194069)
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Keywords | 母性愛 / 看護介入 / 脳科学的 |
Research Abstract |
本年度は、母性愛を獲得するメカニズムの解明を目的とし、母性愛を感じる際に賦活するとされている脳領域が、妊婦においても同様に賦活するか、またそれは如何なる妊娠週数から見られるか、について中心的に研究を行った。研究内容の実施に先立ち、超音波エコー装置を用いた胎児画像の撮影について、本学倫理委員会に申請し、承認を得た。一方、妊婦の非侵襲的脳機能計測については、既に承認済みであった。これまでに申請者らは、妊娠・出産経験のない女性(未産婦)と母親(出産後平均16ヶ月)とを比較し、乳児の情動識別課題(他者の乳児の画像を刺激として用いている)に対する右前頭前野の活動が異なることを見出した(Nishitani et al., in press)。また、同領域の活動は、わが子の笑顔刺激呈示に対しても増加が見られることから、同領域の活動は母性愛に関与する可能性を示唆した(Nishitani et al.,投稿準備中)。そこで、本研究では、妊娠30週の妊婦8名(初産)を対象に、まず乳児の情動識別課題を実施し、近赤外分光法による脳機能計測を実施した。その結果、この週数の妊婦では、課題に対する脳活動の増加は見られなかった。申請者らは、母親では同課題に対して右前頭前野の活動の増加が見られる現象を報告しているが、30週の妊婦ではそのような活動は見られず、未産婦と同様な反応を示す傾向が見られた。したがって、他者の乳児の画像を刺激とした課題では、妊婦の母性愛に関与する脳活動は現れないと結論した。現在、このような基礎的知見を集積した後、他者ではなく、わが子(胎児)の動画刺激観察時の脳機能計測を進めるべく、超音波エコーの撮影手技の習熟、対象者の確保、脳機能計測の実施を行っている。また、今後は、胎児愛着の質問紙、ホルモン、ホルモン受容体遺伝子多型といったバイオマーカーについても考慮し、解析を進める計画である。
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