2011 Fiscal Year Annual Research Report
母性愛を育む看護介入法を探索する-脳科学的基盤の解明から-
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22592486
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
荒木 美幸 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 准教授 (10304974)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西谷 正太 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助教 (50448495)
大石 和代 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (00194069)
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Keywords | 母性愛 / 看護介入 / 脳科学的 |
Research Abstract |
本年度は、母親が母性愛を司る脳機能を如何に獲得するかを解明することを目的とし、最近の脳画像研究において、乳児の母親がわが子の映像を観察した際に活動の亢進が見られ、母性愛を反映する可能性が示唆されている前頭前野の活動指標を確立させることを中心に近赤外分光法を用いた研究を行った。母親を対象に、先行研究や申請者等が実施してきたわが子の映像を呈示する課題と他児の映像を呈示する課題との比較を行い、わが子の映像に対し、特に活動の亢進が見られる部位を特定した。また、三次元デジタイザーを用いて、実際の測定部位の国際的な標準脳における三次元脳座標を解析し、申請者等の測定環境で活動の亢進が見られる部位は、右前頭前野のうち、眼窩前頭皮質近傍にあることがわかった。現在、このような基礎的知見を集積した後、わが子(胎児)の動画刺激観察時の妊婦の脳機能計測を進めるべく、超音波エコーの撮影手技の習熟、対象者の確保を行っている。一方、妊娠・出産・授乳に関わるホルモンのうち、最近、特にオキシトシンがヒト母性愛を修飾する可能性を示唆する知見が多数報告され、その受容体遺伝子多型による影響までも鑑みられ、関連性が注目されている。そこで、妊婦の母性愛を反映し得るバイオマーカーとして、オキシトシンにも注目し、CarterやFeldmanらの先行研究で確立されている方法論に基づき、申請者等も唾液中オキシトシン測定法を確立させた。従来、オキシトシンの測定は、採血に伴う侵襲が不可避であったが(一部、尿中測定もあるが)、本法によって唾液中からの非侵襲的測定が可能となり、今後、妊婦の脳指標との関連性(バイオマーカーとしての)も調べられる点で期待ができるだけでなく、周産期の母性愛を対象とした他の多くの研究にも活用可能な点で、当該分野の発展に大きな貢献をもたらすものと思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
超音波ニコー装置を用いた胎児顔画像の撮影を行い、編集後、その映像を妊婦に呈示し、わが子の映像観察中の脳活動を調べる計画であるが、大学病院外来ではハイリスク妊婦が多く、研究の同意を得ることが難しい状況にある。また、超音波エコーによる顔動画の撮影は実験時の胎位によっては全くとれない場合もあり、定期的に顔動画を取得することは困難を極めている。脳領域の特定などは順調に進んでいるが、妊婦を対象とした計測がやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
大学病院外来では、さまざまな合併症をもつハイリスク妊婦がほとんどであり、今後は診療所においてローリスク妊婦を対象に行うよう対処する。また、顔動画の撮影は困難であるため、顔写真の撮影・呈示へと方法論を切り替える選択肢も検討する。しかし、この間、脳機能計測に加え、その他のバイオマーカーの候補となる唾液中オキシトシンの測定系といった方法論の確立は進んだため、妊婦を対象とした実施を最優先課題として、今後の研究の軌道修正を図る。
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