2013 Fiscal Year Annual Research Report
婦人科疾患の治療前後における性機能、排尿機能およびQOLの変化に関する研究
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22592515
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
石田 志子 東北大学, 大学病院, 助手 (20269377)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
新倉 仁 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (80261634)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 婦人科疾患患者 / QOL / FSFI / 排尿機能スコア / 自律神経温存広汎子宮全摘術 / 術中神経刺激 |
Research Abstract |
今年度2月末までの初回調査の同意率および郵送調査の回収率は調査開始からの4年間で最も高く、郵送調査の回収率もほとんどの時期で50%以上であった(同意率:84.1%、回収率:1ヶ月 58.4%、3ヶ月 50.9%、6ヶ月 52.2%、12ヶ月 48.9%、24ヶ月 59.3%、36ヶ月 56.5%)。 子宮の悪性腫瘍で開腹子宮全摘術を受けたものについて、性機能スコア、排尿機能スコア、QOLへの影響を検討した昨年度までの結果から、広汎子宮全摘術で神経温存されたものは、神経に対する操作の加わらない術式と比較して性機能、排尿機能、QOLが同等以上の可能性が示唆され、神経温存術式の効果が裏付けられた。一方で、リンパ節郭清範囲がQOLに悪影響を及ぼす可能性が示唆されたことから、さらに詳細な検討を加えた。 単純あるいは拡大子宮全摘術+骨盤リンパ節郭清群(PLA群)と単純あるいは拡大子宮全摘術+骨盤および傍大動脈リンパ節郭清群(PALA群)との比較では、12ヶ月の排尿機能スコアとQOLスコアがPLA群に比べてPALA群で劣っていたが(p <0.05)、性機能スコアには差がみられなかった。さらに骨盤リンパ節郭清あるいは骨盤および傍大動脈リンパ節郭清をともなう単純子宮全摘術(ATH群)と拡大子宮全摘術(ETH群)との比較においては、12ヶ月の排尿機能スコアおよび1ヶ月の性機能スコアがATH群に比べてETH群で劣っていた(p <0.05)。 以上より、婦人科疾患の外科的治療後12ヶ月までの性機能、排尿機能、QOLについては、リンパ節郭清範囲だけでなく子宮全摘範囲についても、広範囲なほど悪影響を及ぼすことが推察された。今後は長期的な影響について詳細に分析し、主観的評価(自由記載の内容)についても検討を加える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度3月以降の1年間の新規協力者は83例と順調にデータ集積ができており、当初の目標数を上回っている。しかしながら治療前をベースに随時郵送調査を行っているため、治療後24ヶ月以降のデータの集積には時間を要している。6割近い回収率であっても現時点のデータ数は、治療後24ヶ月が105、治療後36ヶ月については70と、まだ少ない状況である。 したがって、治療後の長期的な性機能、排尿機能、QOLの変化については、いまのところ明らかな結果が得られていない。
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Strategy for Future Research Activity |
得られたデータは、性機能、排尿機能、QOLに影響を及ぼすことが知られている年齢分布に偏りがあること、併存疾患や障害等により治療前からQOLが低下している症例を除くと解析対象者数が減ることなどから、最終年度もひきつづき可能な範囲で新規データを集積していく予定である。さらに治療後の郵送調査のデータ回収にはこれまで以上に力を入れ、今年度半ばには治療後36ヶ月のデータも100近く集まると推測している。最終年度のデータを加え、婦人科疾患患者の治療後のより長期的なQOLの実態を明らかにすることができると考えている。 さらに今年度は、アンケートの自由記載欄から得られた結果についてもその内容を分析し、QOLの改善・向上のための具体的な方策を提示したいと考えている。
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