2011 Fiscal Year Annual Research Report
健康相談を足場とした在日日系ブラジル人母子のサポートシステムの構築に関する研究
Project/Area Number |
22592546
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
畑下 博世 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (50290482)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金城 八津子 滋賀医科大学, 医学部, 助教 (20548193)
マルティネス 真喜子 滋賀医科大学, 医学部, 客員助教 (10599319)
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Keywords | 在日日系ブラジル人 / 母子 / サポートシステム / 健康相談 / 異文化看護 |
Research Abstract |
【目的】健康相談を足場として、研究者と産科クリニック、保健師等が協働し、A県在住の日系ブラジル人妊産婦のサポートネットワーク体制構築に取り組む過程を分析する。 【方法】産科クリニック2施設の医療職、行政保健師に研究の合意を得て、平成22年11月から平成23年3月に産科クリニックの一室で健康相談を実施した。チェックリスト^<*1>、および面接によりアセスメントを行い、支援が必要と判断した場合には、引き続き研究者と通訳者、および保健師等の支援につながるよう調整した。また状況に応じて、各関連機関に同行して、各関連機関でのサービスの提供と利用状況の実際について参加観察を行った。なお、すべての過程にポルトガル語通訳者が同席した。 【結果】継続して関わっているケースは20名であった。在日日系ブラジル人母子は、出産から子育て期を通して利用する関連機関で、様々な困難に直面していた。我々は、個別の健康相談を通して、ケースに共通する困難を明らかにした。その困難を「つまずきポイント」とし、関連機関毎にどのような課題があるのかを明らかにした。 その結果、母子サポートシステム構築に関わる主な関連機関は4か所(産科クリニック、市役所(出生届出、母子健康手帳交付、福祉部門)、保健センター(乳幼児健診とその後のフォロー)、小児科、託児所(保育園))であった。また、各機関における課題(つまずきポイント)と、新生児訪問ハガキ、既存のハイリスク母子連絡票の利用と活用方法に課題があることが明らかとなった。 【考察】在日日系ブラジル人母子は各関連機関においてサービス提供を受ける際、共通する困難なつまずき課題があった。これは、在日日系ブラジル人母子の背景に共通する言語・文化の相違、境遇を根底とした母子の健康課題が、現在の日本における母子サポートシステムでは対応困難な状況にあると考えられる。在日日系ブラジル人母子のみを対象にした新たなサポートシステムを作成するのではなく、既存の日本の母子サポートシステムを活用しながら、要となる支援機関と支援に重点をおくことで、在日日系ブラジル人母子支援に有効で、有機的なケアシステム構築が可能となると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、平成23年度は個別の健康相談を通して、データ収集が順調に進んでおり、研究の進捗状況が順調であるため。
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Strategy for Future Research Activity |
個別の健康相談を足場として、在日日系ブラジル人母子に共通するサポートシステム上の課題(つまずきポイント)が明らかとなった。今後は、平成24年11月まで現在の健康相談を継続することで、経過を追って乳幼児の発達過程上の健康相談に応じるとともに、各関連機関を連携するための母子保健システムの構築を検討中である。平成24年度は母子保健システム構築の前段階として、関連機関の専門職を対象とした支援集を作成予定である。 在日日系ブラジル人母子に対して、直接母子保健サービスの提供を行っている専門職を対象にした「在日日系ブラジル人母子保健:つまずきポイントへの対応集」を作成し、研修会等を行うことで、在日ブラジル人母子保健サービスに必要な基礎知識を提供するとともに、その対応の実際を学んでいただく。 研究を遂行する上での今後の問題点は、各関連機関が行政機関であることが多く、有機的なケアシステム構築のためにどのようなアプローチが効果的か、検討が必要である。 対応策としては、関連機関に勤務する専門職を対象とした研修会を企画し、その機会を利用して顔合わせを行う。その際に、マイノリティーである日系ブラジル人母子を対象とした支援に対して、地域における共通した支援目標を掲げてもらい、ボトムアップ型の地域連携の基で在日日系人母子サポートシステムの構築を目指す。.
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