2012 Fiscal Year Annual Research Report
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22592616
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
廣島 麻揚(鈴木麻揚) 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (60336493)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 生活困難感 / うつ病 |
Research Abstract |
本研究の目的は、近年その対応の難しさが叫ばれているディスチミア親和型うつ病および逃避型抑うつ病患者を対象に加え、うつ病患者の生活困難感の概念モデルを完成させること、およびこれらの患者にも活用できる「うつ病患者生活困難感尺度」を作成することである。 本年度は、昨年度までの研究成果で明らかにされたディスチミア親和型うつ病および逃避型抑うつ病患者も対象に含めた生活困難感の概念モデルをもとに、「うつ病患者生活困難感尺度」の尺度項目を選出し、妥当性を検討した。また研究成果を社会に還元できるよう、研究発表を行った。具体的には、下記の通りである。 研究代表者の所属機関の変更があったため、倫理規定が遵守されていることを再確認した。また所属機関周辺の精神科医療・福祉施設に研究協力を依頼し、研究協力施設の開拓を行った。 昨年度までの研究成果で明らかにされたディスチミア親和型うつ病および逃避型抑うつ病患者も対象に含めた生活困難感の概念モデルをもとに、「うつ病患者生活困難感尺度」の尺度項目を選出した。項目の選出にあたっては、当事者の言葉や困難感を大切にし、さらに困難感が解消された時に感じる感情も取り扱えるよう配慮した。そして、「うつ病患者生活困難感尺度」の尺度項目案ができたところで、精神医学、精神保健、精神看護の専門家および臨床家、そして当事者の方に項目の妥当性を検討してもらった。その結果、生活困難感が病前性格に起因するような表現があり、誤解を招かないよう修正する必要があることが確認された。現在、修正作業を行っている段階である。 さらに研究成果を社会に還元するために、これまでの研究成果を国際学会(10th Biennial Meeting of the Asia Pacific Society for Neurochemistry)と国内学術雑誌(健康科学)に発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H24年度の研究目的は、昨年度までの研究成果で明らかにされたディスチミア親和型うつ病および逃避型抑うつ病患者も対象に含めた生活困難感の概念モデルをもとに、「うつ病患者生活困難感尺度」の尺度項目を選出し、妥当性を検討すること、および研究成果を社会に還元できるよう、研究発表を行うことであった。 H24年度は、研究代表者の所属機関の変更があった。そのため当初研究計画になかった新しい所属機関での倫理規定遵守の確認と、新しい所属機関近隣の研究協力施設の開拓という課題が発生した。新しく追加となった課題ではあったが、倫理規定が遵守されていることが確認でき、また所属機関周辺に研究協力施設も確保できた。 また当初の計画通り、「うつ病患者生活困難感尺度」の尺度項目が選出できた。項目は困難だけに留まらず、困難が解消された際に感じる感情も入れ込んだことでリハビリや回復にもつながるものになった。また、尺度項目案ができたところで、精神医学、精神保健、精神看護の専門家および臨床家、そして当事者の方に項目の妥当性を検討してもらった。その結果、概ねよい回答が得られたものの、生活困難感が病前性格に起因するような表現があり、誤解を招かないよう修正する必要があることが確認された。現在その修正作業を行っている段階である。 また、研究成果を社会広く周知し、社会に還元するために、国際学会と国内学術雑誌に発表している。この2点は社会貢献という視点から大きく評価できる。 以上、H24年度の研究目的のおおよそが達成され、研究は順調に進んでいると思われる。また尺度項目の修正にやや時間がかかっているものの、この修正は研究上繊細かつ重要なものであり、時間を要すことも当然のことと考える。研究成果の発表もなされ、研究は大きな成果をあげている。
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Strategy for Future Research Activity |
H25年度は研究期間の最終年度にあたり、尺度を完成させ、信頼性・妥当性を検討することと、これまでの成果を社会に向けて発信すること、今後の発展の方向性を検討することが大きな目標になる。具体的には、以下の通りである。 昨年度までに作成された、ディスチミア親和型うつ病および逃避型抑うつ病患者を対象に加えた「うつ病患者生活困難感尺度(案)」は病前性格に起因するような表現があり、修正が必要であることが確認された。そのためこの修正を行い、さらに尺度項目を洗練させる。これらが終わった時点で再度精神医療・保健・福祉の専門家と当事者に妥当性を検討してもらう。 十分な妥当性が確保された後に、複数名の当事者に尺度を行ってもらい、信頼性を検証する。調査ではうつ病患者生活困難感尺度だけでなく、自尊感情尺度、社会参加効力感尺度など関連が予想される尺度も同時に行ってもらい、併存妥当性も検証する。関連が予想される尺度については、最新の文献含め文献検討を十分にし選出する。使用尺度はそれぞれ使用許可を確認する。データの収集およびその後の管理については、倫理規定を遵守する。また調査実施に先立ち、可能な限りフィールドに参与し、対象者との関係の確立および対象理解に努める。調査の後データベースの作成をし、統計ソフトを使用したデータ分析、尺度案の信頼性妥当性を検証する。 また研究成果を社会に還元できるよう、研究成果を発信する。年度末には研究報告書を作成し、研究成果の可視化を目指す。さらに作成されたうつ病患者生活困難感尺度が有効に使われるよう臨床に向けての指針や研究の今後の方向性について明かにする。
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