2011 Fiscal Year Annual Research Report
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22600002
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
朱 寧進 東京医科歯科大学, 大学院・医歯学総合研究科, 助教 (10436636)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宗田 大 東京医科歯科大学, 大学院・医歯学総合研究科, 教授 (50190864)
関矢 一郎 東京医科歯科大学, 大学院・医歯学総合研究科, 寄付講座教授 (10345291)
辻 邦和 東京医科歯科大学, 歯と骨のGCOE拠点, GCOE拠点形成特任教員 (20323694)
麻生 義則 東京医科歯科大学, 大学院・医歯学総合研究科, 寄附講座講師 (50345279)
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Keywords | 膝疼痛 / 前十字靭帯損傷 / 変形性関節症 / 関節液 / オステオポンチン(OPN) / 関節炎 / Visual Analogue Scale(VAS) |
Research Abstract |
変形性関節症(OA)に伴う疼痛は、患者の日常生活の質を著しく低下させる。本学運動器外科学教室では、膝OAの病態の分子メカニズムを明らかとする目的で膝OAの進行とともに発現量が変動する遺伝子の網羅的解析を行っている。その結果、関節液において病態の進行とともに発現量の増大するタンパクの一つとしてオステオポンチン(OPN)を同定した。さらに、臨床症状との相関解析から関節液中OPN量は膝疼痛のレベルに関連する可能性を示した。以上の予備的検討をふまえて、本研究期間では以下の項目の検討を行っている。(1)臨床所見とリンクさせたヒト関節液の大規模臨床データベースの構築、(2)関節液中OPN量と関節疼痛、及び疼痛物質量の相関の解析、(3)OPN欠損マウスを用いた膝OAモデルにおける痙痛の閾値の測定、(4)関節支持組織における疼痛閾値低下に関する分子メカニズムの解明 これまでの検討において、ヒト関節液中のOPN量は、膝受傷後早期に一過性に増大することを明らかとした。また、受傷後1ヶ月以内において、関節液中OPN量は、膝疼痛レベルと有意な正の相関を示すことを明らかとした。関節液中に存在するOPNによる疼痛発症のメカニズムを検討するため、関節の炎症とOPN量との相関を検討した結果、炎症に伴う関節液量の増加と、関節液中OPN濃度に有意な正の相関があることを明らかとした。以上の結果は、関節液中に存在するOPNが関節腔内で炎症性サイトカインとして機能している可能性を示唆している。興味深いことに、膝受傷後1ヶ月以上の、急性炎症の所見がみられない患者由来の関節液を用いた検討では、トロンビン切断型のOPNの量と運動負荷時の関節疼痛の重症度の間に有意な負の相関があることを明らかとした。この結果は、関節液中のOPNは、炎症がない状態においてヒトの痛みに対する感受性を規定している可能性を示唆しており非常に興味深い。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ヒトの関節液の大規模臨床データベースの構築と解析の項目に関しては、おおむね順調に進んでおり、現在研究成果を論文に投稿中である。その他、OPNノックアウトマウスを用いた疹痛発症の分子メカニズムの解析に関しては実験準備は整っているが、本学のP2A実験施設のセットアップに時間がかかったため、ようやく本年度より開始したところである。本理由により、やや遅れているとの評価を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の現在までの重要な成果として、次の二点が挙げられる。第一点目は、関節の疼痛に関与することが示唆される新たな因子(OPN)を同定したこと。もう一点は、関節疼痛を含む関節症発症の分子基盤を解析するためのヒト関節液データベースの構築を行ったことである。今後の方針の中で最も重要なものの一つに本データベースの継続的構築があげられる。同一患者の術前、術後、抜釘時のサンプルの生物学的パラメータと臨床所見の経時変化を一つのデータベースに統合することにより、病態進行の分子基盤の更なる解析と、それに基づく予後予測法の確立を行っていきたい。
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Research Products
(2 results)