2011 Fiscal Year Annual Research Report
無性プラナリアに生殖器官を誘導するケミカルシグナルの研究
Project/Area Number |
22603010
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
前澤 孝信 慶應義塾大学, 医学部, 特任助教 (90548398)
|
Keywords | 生殖器官誘導物質 / プラナリア / 生体分子 / 組織・組織 / 発生 |
Research Abstract |
我々のグループではプラナリアに含まれるD-トリプトファン(D-Trp)が無性個体(OH株)に卵巣発達を誘導することを明らかにしている。本研究では、D-Trpの標的細胞を明らかにすることが1つの目的である。前年度の結果より、卵巣誘導活性を保持しながらD-Trpに修飾を加えて分子プローブを作成することは困難だと判断された。今年度は、抗D-Trp抗体を用いてD-Trpの局在の検出を試みた。市販のD-Trp(ADVANCED TARGETTING SYSTEMS社)を用いて有性個体において免疫染色を行ったところ、顕著なシグナルは検出できなかった。一方、抗Tlp抗体(同社、L体およびD体を認識)では、卵黄腺に強く、その他の組織でも弱いシグナルが検出された。我々はHPLCを用いた解析より、有性個体にはL-Trpが豊富に、D-Trpが微量に含まれることを示唆する結果を得ている。以上より、微量であるD-Trpを検出するためにはさらに感度を上げる必要があると考えられる。また、本研究では、陸産プラナリア有性個体(B.nobile)を試料として用い、プラナリア無性個体(OH株)に対し生殖転換を誘導するD-Trp以外の化学物質の単離・構造決定も目的としている。22年度までにB.nobile 830gの80%aq.EtOH抽出物を,各種溶媒で分配、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる分離・精製が完了していた。また、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより分離された各単一画分のみでは、OH株に対する生殖転換誘導活性はなかった。一方、この4画分を同時添加すると活性が著しく上がることが分かっていた。今年度、80%aq.EtOH抽出物を、各種溶媒で分配した活性画分にDr-DAO(プラナリアD-アミノ酸酸化酵素)処理することで生殖転換誘導活性が低下することを明らかにした。この結果から、活性画分中にはDr-DAOの基質が存在すると示唆された。また、我々はD-Trpの他にD-アルギニン、D-フェニルアラニン、D-ロイシン、D-アスパラギンがプラナリアに卵巣発達を誘導することを明らかにした。これらのD-アミノ酸が活性画分中に含まれる可能性が考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1番目の目的を達するために、遊離アミノ酸の免疫染色法を抗Trp抗体を用いて確立することができたため。感度を高める検討を行い、抗D-Trp抗体を用いた方法の確立を目指す。 新たな生殖転換誘導物質としてD-アミノ4種を候補とすることができたため。これらが生殖転換誘導活性画分に含まれるのか検討する。
|
Strategy for Future Research Activity |
種々の増感法を試すことにより、抗D-Trp抗体を用いた免疫染色法の確立を目指す。 生殖転換誘導の活性画分中にD-アルギニン、D-フェニルアラニン、D-ロイシン、D-アスパラギンが含まれるのか検討する。
|
Research Products
(3 results)