2011 Fiscal Year Annual Research Report
大強度中性子場でのイメージングを可能にするボロン吸蔵ゼオライト輝尽性蛍光体の開発
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22604001
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
大西 彰正 山形大学, 理学部, 准教授 (90261677)
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Keywords | 輝尽性蛍光体 / 中性子 / ゼオライト |
Research Abstract |
本年度は、前年度の研究成果を踏まえて、1. 高濃度ボロン吸蔵銀ゼオライト輝尽性蛍光体試料の作製、2. 高濃度試料の蛍光特性評価および3. 日本原子力研究所JRR-3Mでの中性子照射による輝尽性蛍光特性評価を目的として研究を進めた。しかし、研究目的3については、東日本大震災の影響でマインタイムを得ることができなかったため実施できていない。研究目的1に関しては、中性子に対してより高感度な輝尽性蛍光体の開発のためゼオライトの1スーパーケージあたり5分子以上の酸化醐素を吸蔵させた銀ゼオライト試料を作製した。その結果、吸蔵量の増加とともにゼオライトが白色から茶褐色へと変色していくことが明らかになった。これはゼオライトとホウ素との化学反応によりゼオライト骨格が壊れることによると示唆された。中性子コンバーターとしての酸化棚素の吸蔵量はスーパーケージあたり5分子が限度であることがわかった。研究目的2に関して、試料の蛍光特性を評価するため、ボロンが中性子と相互作用した結果放出されるα線によるゼオライト骨格の励起を想定して、ゼオライト中の銀クラスターを直接励起した場合の蛍光特性と、ゼオライトの電子状態を励起した場合の蛍光特性を比較研究した。ゼオライトの励起には軌道放射光からの真空紫外光を用いた。その結果、銀クラスターによる蛍光は母体であるゼオライトを直接励起した場合にはほとんど観測されないことがわかった。これはゼオライト中に生成された電子・正孔対がほとんど銀クラスターに緩和せず、従って母体からクラスターへのエネルギー伝達がほとんど起こらないことを示した。この結果はよりイオン性の高い蛍光性イオンまたはクラスターをゼオライト中へ導入する必要があることを示唆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は中性子輝尽性蛍光体に対して日本原子力研究所において中性子照射実験を行い、実験試料の中性子特性に取りかかる予定であったが、東日本大震災の影響によりマシンタイムが得られなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
中性子照射実験については震災の影響で計画していた日本原子力研究所での実験が次年度においても不可能であるため、今後は名古屋大学大学院工学研究科の協力の下、密封線源を用いた実験で対応することとする。また、中性子コンバーターとしてのボロンをゼオライト細孔内に高濃度吸蔵させるとゼオライト自体が変質することが明らかになったため、リチウムコンバーターの導入も検討する。
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Research Products
(2 results)