2011 Fiscal Year Annual Research Report
中性子ーX線コントラスト差を用いた小角散乱法によるナノグラニュラー薄膜の定量解析
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22604003
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
大場 洋次郎 独立行政法人物質・材料研究機構, 量子ビームユニット, NIMSポスドク研究員 (60566793)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
阿部 世嗣 (財)電気磁気材料研究所, 電磁気材料グループ, 主任研究員 (20202666)
大沼 繁弘 (財)電気磁気材料研究所, 電磁気材料グループ, 主任研究員 (50142633)
大沼 正人 独立行政法人物質・材料研究機構, 量子ビームユニット, 主席研究員 (90354208)
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Keywords | 量子ビーム / ナノ材料 / 小角散乱 / 複合材料・物性 |
Research Abstract |
ナノグラニュラー薄膜はナノ粒子がマトリックス中に埋め込まれた組織を有し、優れた磁気・電気・発光特性等を示すため次世代材料として注目されている。これらの特性はナノ粒子とマトリックスの組成分配に強く依存するが、粒子サイズが微小であるため、従来の手法では定量的な組成分析が困難であった。本研究では、中性子小角散乱(SANS)とX線小角散乱(SAXS)を併用した合金コントラスト変調(ACV)法を用いてナノ粒子とマトリックスの組成分配を解析し、磁気・電気・発光等の諸特性に対する影響を解明することを目的とする。平成23年度は、優れた高周波軟磁気特性を持つCo-Pd-sSi-Oナノグラニュラー薄膜のsANs測定、SAXS測定および解析を行った。得られた結果から、ナノ粒子とマトリックスの界面は明瞭であることが分かった。また、同様に磁気構造も明瞭な界面を持ち、酸化物層のような磁性の弱まった領域はほぼ存在しないと考えられた。さらにACV法を用いた解析の結果、ナノ粒子とマトリックスの組成は基本的にCo-PdとSi酸化物として説明できることが分かった。しかしながら、得られた実験結果は、マトリックスが純粋なSi-O系であるとした場合の計算値と比較して有意な違いを示した。この違いは磁気モーメントの減少やSi-Oの密度変化等のような磁性材料とアモルファスの一般的な知見では説明が困難である。一方、Coがマトリックスにも分散していると考えると、計算値は実験結果と一致した。以上のことから、Co-Pd-Si-Oナノグラニュラー薄膜において有意な量のCoがマトリックス中に存在することを明らかにすることができた。マトリックス中へのCoの分配は、磁化や電気抵抗の減少等のように特性の変化を生じさせると考えられるため、ナノグラニュラー薄膜の開発において重要な知見である。本研究の結果から、ACV法がナノ粒子とマトリックスの組成分配の解析に有効であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
J-PARCの使用はできなかったものの、当初の計画通り代替としてmf-SANSの整備を進め、ナノグラニュラー膜のSANS測定を行うことができた。得られた結果を解析することにより、当初の計画通りナノグラニュラー中のナノ粒子とマトリックスの組成分配について知見を得ることができた。また、これらの成果を国内学会および国際会議で公表することができ、研究成果をアピールするとともに、多方面からの意見を取り入れることで議論を深めることができた。また、mf-SANSで得られた結果は、マシンタイムが慢性的に不足しているSANS測定において、小型の装置や従来よりも弱い中性子ビーム等を用いても充分測定が可能であり、これらの装置が材料開発に有効であることを示す画期的な成果とも位置付けられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、これまでに得られたデータをより精密に解析し、ナノ粒子とマトリックスの組成分配について結論付ける。以上の成果を、論文として発表することを目指す。また、太陽電池用ナノグラニュラー薄膜等の新たな系統の試料についてSAXSおよびSANS測定を行い、解析と検討を進める。
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Research Products
(3 results)