2011 Fiscal Year Annual Research Report
量子ビームを用いた強誘電体ナノクラスターの作製と評価
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22604006
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
米田 安宏 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究部門, 研究主幹 (30343924)
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Keywords | 強誘電体 / 放射光 / イオンビーム / 表面改変 / ナノクラスター |
Research Abstract |
昨年度に既にイオンインプランテーションを用いた手法によって酸化物ナノ構造体の作製に成功したため、そこで得られた知見をバルク物質への適用を目指した研究を行った。我々が作製したナノ構造体においては、そのサイズ効果のため、バルク物質とは異なる平均構造を有していた。例えばペロブスカイト系酸化物強誘電体(化学式:ABO_3)では、酸素八面体の中心にあるBサイトと酸素12配位のAサイトではコヒーレント長が異なり、一般的にAサイトの方がランダムネスが大きくコヒーレント長も短い。このコヒーレント長の差異が種々の相転移の原因になっている。しかし、ナノ構造体においてはサイズ効果によってAサイトとBサイトのコヒーレント長がほぼ等しくなっており、この2つのコヒーレント長の競合が新規な物性の原因となっている。 このようなコヒーレント長の競合をバルク物質においても実現、検証するために今年度は種々のペロブスカイト構造における局所構造解析を行った。特にペロブスカイト酸化物強誘電体のAサイトとBサイトのコヒーレント長にモジュレーションを与えるために圧力を印加、またイオンサイズの異なる原子で置換することなどを試みた。特に高圧下におけるペロブスカイト酸化物Bi(Mg_<0.5>Ti_<0.5>)03では、圧力効果によってBiサイト(Aサイト)のコヒーレント長が変化し、これによって平均構造も変化していることがわかった。また、圧力によって出現した高圧相において、常圧相では得られない強誘電性も発現していることから、異なるコヒーレント長にモジュレーションを与えることの重要性を示すことができた。また、同様の効果がイオンサイズの小さな原子による置換効果によっても生じていることが、AgNbO_3のLi置換効果によっても示すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最優先のテーマであった、イオンビームを用いたナノ強誘電体の作製は、昨年度に日本原子力研究開発機構高崎量子ビーム研究所のマシンタイムが大幅に追加されたことから、目的を達成することができている。得られたナノサイズ強誘電体をバルク物質へも展開するために、他の手法で強誘電体のナノサイズ化を試みている。今年度は高圧効果や置換効果によってナノドメイン化を図り、いずれも良好な結果を得ている。
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Strategy for Future Research Activity |
イオンインプランテーションはナノサイズの強誘電体を確実に作製するには非常に有効な手法である。事実、この方法で得られた強誘電体からナノサイズ特有の構造や物性の発現を確認した。しかし、この手法は非常にコストがかかり、工業的に展開するには不利である。そこで、イオンインプランテーションで得られた強誘電体と同じ特性を得られる他の手法の開発へと繋げなければならない。今年度は、強誘電体のナノサイズ化、ナノドメイン化を図るために高圧合成や不純物ドープなどを試みた。今後はさらに水熱合成などのpureでさらに安価な合成法で得られたナノサイズの強誘電体で、イオンインプランテーションで得られたサンプル同様の物性発現を試みる必要がある。
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Research Products
(7 results)